第22話 GWの約束(1)


間空いてしまいました。済みません。


GWを前に妹の麗香、幼馴染の絵里奈、同僚の恵子が、大樹にデートの約束を取り付けようと・・。


大樹は花屋の桂と約束もあり、何とか乗り切ろうと考えますが・・。


―――――


「麗香、行ってくるね」

玄関で靴を履きながら言うと、妹の麗香が、パタパタと廊下を走って来た。


「行ってらっしゃい。今日の帰りは」

「いつもと同じ。約束とかないから二十時前には、帰って来れる」

「じゃあ、夕飯待っているね」

「了解」


私は、お兄ちゃんを笑顔で送り出すと、何となく可笑しくなった。

まるで、夫婦みたい。そうだったらいいな・・。無理だけどね。


地下鉄の改札を抜け、すぐ左に曲がる。この時間は、まだ、お店が空いていないので歩いているのは、通勤の会社員のみだ。


大きな黒い扉が、自動的に開くともう一つドアを通過する。両脇に三基ずつ、合計六基あるエレベータの前では、このビルのオフィスで働く人達が、待って居た。


自分も、順番に従い、開いたエレベータに乗る。全員が、十階で一度降りるので、特に降りる階を意識することもない。


「広瀬さん、おはようございます」


声の方を見ると緑川恵子が居た。乗る時は気付かなかったが。

「おはようございます。緑川さん」


それ以上の会話はない。基本エレベータの中での私語は、禁止だ。

十階に着き、エレベータを降りて、まっすぐ進むと大きな総合受付があり、左に曲がると階層毎のエレベータとがある。


ここのビルに入る会社は、複数階使用しているのがほとんどで、その主要な会社が、エレベータのセキュリティゲートの横に受付を置いている。


やはり、ここでも両脇に二基ずつ、計四基のエレベータがある。ここも順番でエレベータに入る。既に誰かが、二十一階を押していたので、そのまま乗ることにした。


オフィスルームに入る前にもセキュリティガードがあり、ノンタッチで社員証をかざすとドアが、カチャという音と共に開錠した。


今時、IT系では、当たり前のセキュリティだ。


 僕は、挨拶をしながらPCを立ち上げると、二席向こうの対角線上にいる緑川さんが、ニコッと挨拶してくる。

 何となく、微笑んでスクリーンへ顔を向けると、隣に座っている、先輩が声を掛けて来た。


「広瀬、ちょっといいか」


先輩が、席を立って、会議室へ行く。まだ、早いので、予約なしで一つの会議に入ると


「広瀬、お前をプロジェクトから移動させる」


「えっ」

「これは、部課長の了承を得ている」

「僕が何か失敗したのでしょうか」


心当たりがないという思いで、先輩の顔を見ると


「安心しろ。広瀬は良く仕事をしてくれる。ミスもない。だからだよ。今日から、Bブロックへ行ってくれ。新しいプロジェクトが始まる。そうだ、順番が違ったが、広瀬の正式配属先は、ここ開発第一部だ。俺と同じ部署だ。もうすぐ人事通達が、正式に行く。これからも宜しくな」


何か、良く理解出来ないままに、席に戻って、ディスプレイを見ると、右下のメール連絡に人事通達が、有った。


「今日中に移動しろ。向こうPM、PLへは連絡済みだ。喜んでいたぞ。広瀬が行くと言っていたら。引継ぎ事項は、引き継ぎ表にまとめておいてくれ。分からなければ、聞きに行かせる」」

「はい、了解しました」


引継ぎ表に必要な項目を入力すると、僕は、ノートPCだけを持って新しいプロジェクトチームへ移動した。個人ロッカーは同じフロアなので、何も変わらない。


 席を立って、歩き始めると、緑川さんが不安げな顔で僕を見ている。

そんな顔したら、もろバレだろ。勘弁してほしい。


 新しい、席について、すぐにスマホがなった。緑川さんからの連絡だ。内容は想像つく。確認しようとしたが、新しいPLから声を掛けられた。


なにか、広瀬君が、先輩から声を掛けられている。あれ、会議室に行った。仕事の話かな。

あっ、帰って来た。あれ、何かおかしい。ノートPCを持ってどこかへ行った。

どうしたんだろう。確認してみよう。スマホでチャットを送った。


 返信がない。私が、ディスプレイを見る振りをしてスマホを見ていると


「緑川さん。ちょっと」

「はい」


「緑川さん、一年間の研修ご苦労様でした。このプロジェクトで色々学んだと思う。正式な配属の件だけど。君を見込んで来てほしいという人がいてね。営業一部の千城さんの所だ。人事通達があると思うけど、移動する準備をしておいてくれ」


「あの、いきなりなので」

「そうだね。あと、ノートPCとか、機材は、開発一部の資産だから、すべておいて行くように。資産所有者変更手続きは、こちらでしておくから。じゃあ、今までご苦労様」


それだけ言うと、先輩は会議室を出て行った。

腑に落ちない。どういう事。いきなり営業なんて。それも全く知らない部署。広瀬君とも連絡が取りずらい。営業部隊は、フロアが違う階だ。どうしよう。

 とにかく、広瀬君と相談しなきゃ。



「ただいま、麗香。帰ったよ」

パタパタとキッチンから足音が来る。

「お帰りなさい。早かったね。まだ、十九時前だよ」

「うん、部署移動が有って。手続きだけで終わったんだ」

「えっ、何かしたの」

「いや、何も」

「あっ、後で教えて。手を洗って着替えて来て」


それだけ言うとキッチンへ戻った。


麗香に世話になりっぱなしだな。親の帰国は、まだ先だ。なにか、してあげられないかな。


夕食後、リビングで

「と言う訳で、正式配属で、新しいプロジェクトに配属になった。部署は変わらない」

「そうか、聞いていると評価されている感じね」


どっちが年上とも分からない言葉に


「どうだろうな。ところで麗香。もうすぐGWだ。どこか行きたいところないか」

「えっ、お兄ちゃんが連れて行ってくれるの」

「ああ、麗香に家事の事、頼みっぱなしだから。たまには、兄貴らしいこともしてあげたい。好きな洋服あったら買ってあげてもいいぞ」


「本当。嬉しい。欲しい洋服あった。夏用の。でも、旅行とかは、勉強しないといけないから」

「そうか、日帰りだったらどうだ。高尾さんの温泉とか」

「お兄ちゃん、わたしまだ、若いよ」

「いや、高尾山登って、温泉入って、美味しい食事をしよう」

「それなら、一日位いいかな」


私は、ベッドの中で、嬉しさを隠せなかった。

えへへ、お兄ちゃんと一緒に高尾山登って、一緒に温泉入って、混浴は無いか。美味しい食事して・・。やっぱり一泊ありかも。お兄ちゃんと一緒のお布団で寝れるチャンスもありそうだし。明日考えよう。


朝、通勤中にスマホがなった。絵里奈からだ。

『大樹、GW予定ある。一緒に旅行行かない』


また、きわどいお誘いを。

『うーん、行くのは良いけど、一泊は無理。麗香もいるし』


少し、間があって

『麗香ちゃんも一緒でいいよ』


え、ええっ、どういう事。意味不明。

『・・・』

『今日何時に終わる』

まさか・・・。


『新しいプロジェクトに投入されたから、遅い』

『何時』


絵里奈らしいな。この前のしおらしさは、何処いったんだ。

『二十時過ぎる』

『じゃあ、二十一時に電話する』

『了解』

了解のスタンプが押されてきた。


はあ、全く何も変わっていない。あれ以来、少しは、変わるかななんて思った俺が、あほだった。

どうするかな。一日は、妹と一緒。一日は、桂さんの為に開けておきたいし。連絡取らなきゃ。本当は、桂さんと一泊なんて思っていたけど・・。はぁ。絵里奈と一日じゃあ、とても、一泊は無理だ。休みは、五日間だけだし。

桂さんとは、夏休みかな。それまでに距離詰めておこう。


―――――


大樹君。GW上手くいくかな。次回は、GW編です。

なにか、変化有りますかな?



面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


宜しくお願いします。


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