第18話 人の気持ちと自分の気持ち


大樹と絵里奈の関係が前に進んだように思えるのですが・・。


やはり恋の女神アフロディーテは、奔放さもお好きなようで。

あっ、女神様は、本編には出て来ません。


―――――

ちょっとまだ、下半身に違和感がる。翌日は、こんなものなのかな。でも良かった。これで少し安心。私の初めては大樹。大樹の初めては私。

でもはっきりしなければいけないことがある。私の心の問題。


「こんにちわ、お花が欲しいのですけど」

「どのようなお花ですか」

「綺麗で恥じらいを感じるような」

「それでは、芍薬(シャクヤク)はいかがですか」


店員が保冷ケースにある花を指さす。

「今は、蕾ですが、段々膨らんで大きく開きます。乙女の思いが現れている様なお花です」


保冷ケースの中に静かに置かれていた。とても純心な蕾を感じた。

「これにします」

「分かりました。少しお待ちください」


店員は、芍薬を店の奥に持っていき、丁重にパラフィンシートで包んでくれて持ってきた。物腰が柔らかく、ボーイッシュな雰囲気だが、エプロンに隠れたスタイルの良さは、見れば十分に分かった。

「あの少し、お話できますか」

「はい、少しならば」

「毎土曜日にお花を買いに来る男性がいると思いますが」

「ああ、いますが」


少し怪訝な顔で見られる。

「あっ、彼、私の幼馴染でお花買うならこのお店がいいよ。と言っていたので、いつもどのような花を選ぶのかなと思って」


相手が分かるとホッとした顔をして

「広瀬さんですか。ええ、毎週とは言いませんが、良くお花を買って頂いています。少し、懇意にもして頂いています。本当に素敵な方ですよね」


「そうですか。昔からのいつも側にいるので。あいつそんなに優しかったかな」


相手の言葉を引き出さないと。すこし乱暴な言い方をしてみる。


「いえ、そんな事ないです。素敵な方だと思います」

「あら、お花の購入以外にも会ったりしたの」

「あっ、いえ数回お食事に誘われました」


下を向きながら恥ずかしそうに言っている。


「それは、良かったです。あいつに彼女なんかできないと思っていたので」

「彼女なんて、そんな」


「ありがとう。お花の代金まだ払っていなかったわ。おいくら」


 大樹のやつ。

それにしても大樹の話をする時のあの子の嬉しそうな顔。不味い。せっかく、一歩進んだと思ったら。

会社の同僚といい、花屋の店員といい、ここまで来たんだから、はっきり大樹は、私のものと分からせないと。


「どうしたの、桂。女性の人と長く話していたわね」

「ええ、広瀬さんの幼馴染だそうです。ちょっと酷い言われ方をしたので、広瀬さんは、そんな人ではないと言ってしまいました」

「そう」


 母は、何かを感じた様に店の奥に入って行った。



§


昨日、絵里奈を抱いてしまった。あれほど懇願されたのだから。それに終わってからも嬉しそうだから、良かったのだろうけど。

これからどうなるんだろう。ちょっと怖い感じがするな。あの性格だし。

でも絵里奈、綺麗だったな。昨日の夜の事が少し思い出されると、ちょっと、嬉しかった。


絵里奈と結婚。・・ないと思う。うーん。でもどうだろう。彼女の事だ。今までの事を考えれば、延長線上にあるのかな。

じゃあ、昨日は、その為の布石。絵里奈と夫婦か。ピンとこないな。


桂さんの事もある・・。



§

 お兄ちゃん。昨日は、随分遅く帰ってきた。私が、勉強を終わらせて、ちょうどベッドに入ったところだった。

 タクシーで帰って来たみたい。昨日は、絵里奈さんと一緒だったし、あの時間からして二人の仲、進んだのかな・・。


 二人が仲良くなって、恋人同士になって、やがて・・。

分かっている。分かっている。でも・・もう少し、ゆっくりと。私は、もっとお兄ちゃんの側にいたい。色々な事をしてあげたい。食事だって、掃除だって、洗濯だって。下着だって洗ってあげている。

 できれば、お兄ちゃんと一緒のベッドで寝たい。別に何を期待している訳じゃないよ。ただ、お兄ちゃんの腕の中で寝たい。小さい頃は良くしてくれたのに。

 私、おかしいのかな・・・。



§

「おはよう、広瀬さん」

「おはよう、緑川さん」


エレベータで彼と一緒になった。あれ以来、体を合わせていない。でも、二人で何回か

食事にはいってくれている。やっぱり、少し、心を緩めてくれたのかな。

 また、体を合わせたい。でも無理は禁物。


「緑川さん。着いたよ」

「あっ、すみません」


 私、朝から何を考えているんだろう。隣に彼が居て、少し飛んでしまったかな。仕事しないと。


 みんな降りたというのに、緑川さんがぼーっとして降りない。声を掛けたら、顔が赤くなっている。どうしたんだろう。

 あれ、先に歩いて行っちゃった。


「川岸君、山越さん、おはよう」

「「おはようございます」」


あれから、川岸君は、私より川越さんを意識するようになった。あの後、上手くいったのかな。まあ、干渉しないようにしよう。私にとっても都合いいし。


「広瀬、次回のリーダ会から、お前も参加しろ」

「えっ」

「えっ、じゃない」

「A社発注分の工程表の作成とその進捗確認は、お前の担当だろ」

「そうですが、まだ、先輩のサブで作っただけですが」

「何を言っているんだ。だから参加するんだよ。次は、お前ひとりで作る為に、リーダ会に私と一緒に出る」

「分かりました」


「この後、工程進捗会議があるから、一緒に出ろ」

「はい」


 僕は自分のノートPCを持って先輩と一緒に今のプロジェクトの工程進捗会議に参加した。

このプロジェクトは、複数の会社が参加している。会議も同時に参加だ。各社から出される資料を参加各社で確認する為、社内の人間は、自分のノートPCと大型スクリーンに表示される資料見ながら打合せを行う。海外とのやり取りであれば、当たり前の話だ。他の会社も同様にやっているはずだ。


会議後、

「広瀬。お前最近、緑川と良く飲みに行くそうだな」

「えっ、なんで知っているのですか」

「お前なあ、同じプロジェクトだぞ、皆が知っている」

「ええー。そうなんですか」

「全く。で、これを話したのは、緑川の事だ。あいつとはあまり近づかない方がいい」

「なぜですか」

「良くない噂を耳に挟んでいる。お前は有望な後輩だ。つまらない噂に巻き込まれない様にさせたい」

「噂とは」

「それがな・・」


廊下の向こうから緑川さんが歩いて来た。何も言わずに通り過ぎる。

「この話、後でな」

そう言うと、先輩が、別のフロアに行った。



―――――


難しくて、私も混乱・・。でも緑川さんの悪い噂って・・。


面白そうとか次も読みたいなと思いましたらぜひ★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。


お願いします。

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