第9話 柳瀬桂と言う存在
今回は、花屋の娘(店員)、柳瀬桂と広瀬大樹の触れ合いを・・
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私は、柳瀬桂、二一才。駅の側にある花屋の店員。働いて三年になる。本当は大学に行きたかったけど、私が高校三年生の時、お父さんが病気で入院して、学費の工面が出来なくなり、母が経営する花屋を手伝うことになった。
最初は、お父さんもお母さんも大学に行きなさいと言ってくれたけど、家の事情を考えたら、子供の私でも家計が苦しいのは、理解できる。
支援制度なども使えば通えると思ったが、家からの通いでは国立でもない限り、バイトしない事には、足りるはずがなく、どうしても家計に負担がかかる。
お母さんが経営している花屋は、そこそこ大きく、一人では、切り盛り出来ない。手伝っていたお父さんの代わりに、外から人を雇うなら、私が手伝えば、その分お金がかからない。
随分考えたけど、就活時期も終わった時だったから、母の花屋を手伝うことにした。
お母さんは、私が手伝うようになってから、売上が伸びたと言って喜んでいた。まあ、器量とスタイルならちょっと自信あるし。私目当てかな、なんてうぬぼれている気分・・。
そんな時、あの人が花を予約しに来た。一目見ただけで、暖かい感じのする人だった。
お花を幼馴染に贈ると言うので、花言葉を意識して赤い薔薇薦めたら、白い薔薇もお願いされた。幼馴染が羨ましい。
あっ、今日もあの人が来店してくれた。
「あの、お花が欲しいのですが」
「どのようなお花でしょう」
花より私を見ている。
「えーっと、テーブルに置いておきたい可愛い花がいいかな」
「そうですか。それでは、スプレーマムは、どうですか。菊ですが、一つの枝の先端からいくつもの花がスプレーの様に咲きます。可愛いですし、蕾もこれから咲きますよ」
「あっ、じゃあ、それ下さい」
「花瓶は、深いですか」
「二〇センチ位あります」
「では、こんな感じでいかがですか」
「あっ、それでいいです」
あの人が花束を持って帰って行った。あの時、赤い薔薇と白い薔薇を買った次の週から、毎週買いに来てくれる。花が好きなのかな。
「桂、今の人」
後ろからお母さんが声を掛けてきた。
「今の人って」
「今、スプレーマムを買って頂いたお客様。毎週来てくれるわね」
じっと私の顔を見るお母さん。なに・・
「どうしたの」
「桂に気があるのかしら。いつもあなたの事をじっと見ている。花を買いに来るというより、あなたに会いに来ているような感じがするわ」
まさか~。でもそうだったら嬉しいな。あの人なら、側にいて心が落ち着けそう。
はっ、何か考えているの・・。
新しく来店してきたお客様で、その考えを仕舞い込まれた。
§
また、買ってしまった。
近頃、妹から
「お兄ちゃん、どうしたの。毎週お花買いに行って。私、お花好きだから嬉しいけど、前だったら、こんなに毎週買いに行かないわよね。何かあるの」
と言われた後、じーっと見られる。
あの女性、今度、お話しできないかな。思い切って誘ってみようかな。でもどうやって。
テーブルに買ってきたスプレーマムをおいて、花を見ながら考えていると、二階から足音がした。
「お兄ちゃん、また買ってきたの。えっ、スプレーマム。選んだのお兄ちゃん」
不思議そうに僕の顔を見る。
「どうして」
「スプレーマムの花言葉は、清らかな愛だよ。あっ、そうだ。絵里奈さんにあげたら。喜ぶよ。きっと」
目が完全に笑っている。笑い顔をして僕の顔を見ている。明らかに弄っている。
「これは、我が家のテーブルに飾る為に買ったんだ」
「お兄ちゃんが選んだの」
「いや、あの人が・・」
「えっ、あの人。あの人って誰?」
「あっ、いや、その花屋の店員さん」
「へーっ、お兄ちゃんは、花屋の店員さんをあの人って呼ぶんだ」
嵌められた。誘導尋問だ。妹のこんな簡単なトリックに引っかかるなんて。妹をチラ見すると、目が笑っている。
「ふふっ、絵里奈さんに言っちゃお。お兄ちゃん浮気しているって」
「浮気って・・、お前」
「あっ、私、おトイレだ。付いてきちゃだめだよ~」
掴もうと行動に移る間に先制された。妹が廊下に姿を消した後、
ふーっ、まあ、ダメ元で誘ってみるか。
§
お兄ちゃん、この前絵里奈さんに、熱烈な花束を贈ったと思ったら、次の土曜から毎週、花を買いに行っている。確か駅の側にある、少し大きなお花屋さん。行ってみるか。現地調査だ。
でも、今日のお花、私に買ってきてくれたら嬉しかったのに。なんで冗談でも言ってくれないのかな。お兄ちゃんのば~か。
――――
大樹君。これ以上、火種を増やしてどうするの。でも本人無自覚・・。
ラブコメ書いているつもりないんだけど。僕も無自覚・・・・?
面白そうとか次も読みたいなと思いましたらぜひ★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘もお待ちしております。
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