第7話 誕生日のプレゼント


花屋の娘、柳瀬桂さんの登場です。


―――――

クリスマスから年始にかけて、クリスマス休暇を利用して、海外に赴任している両親が帰ってきた。


父親は、ニューヨーク支局長という立派な肩書で、かの国の偉い人とも色々とビジネスの話とかするらしい。自慢のお父さんだ。


お母さんは、ビジネスパートナーの婦人達とのお付き合いがあるらしく、やはり忙しいみたいだ。今でもとても綺麗で優しい素敵な母さんだ。


二人とも、英語には、堪能なので、向こうでの暮らしも抵抗ないらしい。凄いな。


 麗香は、色々なお土産を貰って喜んでいた。僕は、まあお父さんと仕事の話かな。

クリスマスも年末年始も両親と一緒と言う事で、麗香は毎日嬉しそうにお母さんに甘えていた。仕方ないか。赴任して初めての帰国だし。

 


年が明けて、一月も後半になると、例年恒例の絵里奈の誕生日がくる。・・当たり前か。


毎年、三橋家で行われているパーティに、今年は両親不在なので、「うちに来れば」という絵里奈のお母さんの誘いで、僕と麗香が呼ばれている。


「お兄ちゃん、絵里奈さんへのプレゼントは何するの」

「うーん、今年もお花とアクセサリにしようかな。と思っている」

「定番だけどそうだね。私は、まだ学生なので、ハンカチでも送ろうかなと思っている」

「それ良いね。絵里奈喜ぶよ」


当日、地元の駅近くの花屋で買うつもりだったけど、品切れでないと困るので一週間前の土曜日に花屋に顔を出した。

店先で見ていると

「どのようなお花をお探しですか


横から声を掛けられて、振り向く、えっ・・・。

なぜか、相手の顔をじっと見てしまった。なんと言っていいんだろうか。なんか、ストンと心に入るものがあった。

「えっ、えーと」


固まっている僕に、優しい笑顔で

「どなたにあげるのですか」

「えっ、知合いの女性の誕生日に、来週の土曜日なので、今日は予約も含めて来たんですけど」

「まあ、そうですか。それでは、これなど、いかがでしょう」


店員が、勧めたのは、蕾が少し膨らんだ、赤いバラだった。

「そうですね。白も少し入れてくれますか」


色バランスでそう言っただけなのに、店員が、目を大きく開いて

「素敵ですね。そうしましょう。来週土曜日、朝十時には空いていますので、準備してお待ちしています。少しお待ちくださいね」


店の中に入って言って、何か書いた紙を持ってきた。


注文控えだ。名前が下に書いてある。柳瀬桂。

僕はそれを受け取ると、

「あの、来週の土曜日は、あなたはお店に居ますか」

少し、不思議なそうな顔をした後、笑顔に戻して

「はい。お待ちしております」


僕の足では駅から家まで五分位。その間、柳瀬桂の事で、頭がいっぱいだった。

ショートヘアで目鼻がくっきりとした、可愛い感じ。

プロポーションもよくて、仕事柄かジーンズを履いてちょっとボーイッシュだった。エプロンの横からはっきりわかる、大きな胸が印象的。・・・困ったな。これなあに。


「ただいま」

「お帰りなさい」

今日は、学校が休みで塾に行っているはずだが、もう帰って来ていたのか。いつもの様にペタペタと廊下を速足で歩いてくる。


妹が僕の顔をじーっ見ている。

「うん?」

「お兄ちゃん、なんか変だよ」


もう一度、じーっと見られて


「まあいいわ。もう少しでご飯だから。手を洗ったら、リビングで待っていて」

それだけ言うと、キッチンに戻って行った。


なんか、頭の中、見透かされたかな・・


食事中、

「お兄ちゃん、明日用事ある」

「特に無いけど」

「じゃあ、渋谷の駅で午後一時に待ち合わせしない。塾が十二時半までだから」

「なにか、用事あるの」

「うん、勉強忙しくて、絵里奈さんのハンカチかっていないんだ。本当は、二子玉がいいんだけ、渋谷に居て、わざわざ、二子玉まで行く必要ないかなっと思って。去年できた、スクエアビルに行けば、何かあるかなと思って」

「そうか、良いよ」

「ところで、お兄ちゃんは、もう買ったの」

「ああ、アクセサリはね。花は、当日駅前の花屋に取りに行くことにした。さっき予約してきた」

「そうか、絵里奈さんの誕生日だものね」

「えっ」


僕の疑問に笑顔でしか、麗香は答えなかった。


本当は私が・・、でも絵里奈さんだったらしかたないか。



絵里奈の誕生日パーティの当日、僕は昼少し前に花屋に行った。


「済みません」

声を掛けると、この前の女性が、振り向いて、笑顔で

「あっ、先週いらして下さった方ですね。準備してあります。少しお待ちください」

今日もボーイッシュな感じで素敵だ。今日は耳にイヤリングをしている。落着いた感じ。

なんだろう。このなんか分からない感覚は、今迄と違う。


素敵な花束にして店の中から持ってきてくれた。

「わーっ、素敵だ」

「相手の方も喜ぶと思います」


ふふっと軽く柔らかい笑顔を見せると、たまらなかった。

料金を払い、花束を家に持って帰る途中も花屋の女性の事で頭がいっぱいだった。


――――

大樹君。気づいていないのかな。でもいいの?・・・

面白そうとか次も読みたいなと思いましたらぜひ★★★頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘もお待ちしております。


お願いします。


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