2-4

 視界の端に、着信を告げるアイコンが出た。発信者は知らない名だが、同じカウボーイ仲間のものだった。

 老カウボーイは回線を開いた。だが、聞こえてくるのはホワイトノイズばかりで、こちらから呼びかけても応答はない。

「どうしたの?」ポラックの背中から、コニーが訊いてくる。

「仲間からだ」何かあったのかもしれない。カウボーイは通信機を操作し、レーダーを表示させる。探査範囲を広げ、今通話をしている相手の発信元を特定しようと試みる。

 あった。同心円状のレーダーで見ると右上に、発信者の端末を示す光が明滅している。距離からして山の中だ。方向は、彼らが目指している場所と一致している。

 発信者からの言葉は聞こえないまま通信は切れた。電波状態を見ると〈微弱〉を示している。それもどんどん弱まっていき、最後には〈無〉となった。

 頭上を覆う木々がざわめき出す。風が出てきたのだ。

 わずかに垣間見える空は、黄色がかっている。目をこらし、何度も確認したが、確かに色が付いている。

「まずいな」

「何が?」

 コニーの問いには答えず、カウボーイはポラックの背に上がった。そして直ちにその場から離れるよう相棒に指示を出した。

「どうしたっていうの?」

「〈砂嵐〉だ」

「〈砂嵐〉? こんな山の中に?」

「どこにでもから厄介なんだ」

 道はすっかり外れてしまったが、今は嘆いている時ではない。ポラックを走らせながら、カウボーイは身を隠せそうな場所を目で探す。そうしている間にも、空だけでなく、木立の間の光も黄色がかってきた。山の上の方からは、虫の群体が立てる羽音のような音が近づいてくる。

 カウボーイは自身のコートで少女を覆った。それが今、彼にしてやれる唯一にして最善の策だった。

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