第9話 初詣

翌日。昨日は日を跨ぐまで起きていたため初日の出を見ることができなかった。

とはいえ2人と一緒に1年の始まりを迎えられてよかったと思っている。


そんなことを考えながら朝食の用意をしていると2人が起きてきた。


「2人とも明けましておめでとう」

「明けましておめでとうございます、真白さん」

「……明けましておめでとうございます」


小春ちゃんはまだ警戒しつつもきちんと返してくれた。

こういうところを見るにやっぱり根はいい子なんだろうと思う。


「ご飯を食べたら初詣に行ってみようと思ってるんだけどどうかな?」

「初詣ですか、いいですね!」

「行ってみてもいいですよ。暇ですし」


俺はイベントに興味がないとはいえ毎年初詣は済ませるようにしている。

特に理由はないが強いて言えば参拝したらなんとなく清々しい気分になるからだ。

2人の賛同も得たことだし、近所の神社に向かうことにした。


「どこの神社に行くんですか?」

「近所に神社があるみたいなんだ。俺も去年こっちに越して来たばかりだから初めて行くんだけどね」



朝食を食べ終えて各自準備を済ませる。

今思ったけど小春ちゃんの服も買った方がいいよな。

家から持ってきた荷物にスーツケースはなかったし、たぶんリュックの中に入れてるんだろうけどあの大きさなら2・3日分くらいしか入れられないだろうな。


「小春ちゃん、今度服を買いに行かないか?」

「大丈夫です。洗い替えがあるので」

「でも……これからもっと寒くなるわけだし何着かあった方が安心だろう?」

「そうだよ! せっかくなんだし買ってもらいなよ」

「お姉ちゃんまで……」

「まあ今日は店も閉まってるだろうしゆっくり考えてみてよ」

「じゃあ行きましょう! 初詣に!」


新年早々元気のいい葵ちゃんの掛け声とともに俺たちは神社へ向かい始めた。



「着きましたね! 近所にこんな立派な神社があったなんて知りませんでした」

「そうだね。想像以上に立派だ」


家から歩いて10分ほどの位置にあった神社はとても大きな鳥居を構えていた。

そしてあまり知られていないのか元日にもかかわらずほとんど人がいない。


俺は2人に参拝のマナーを教えつつ手水舎に向かった。


「冷たっ」

「お姉ちゃん、声が大きいよ」


確かにとても冷たい。身が引き締まる感じがする。

手を清め終えたところでいよいよ拝殿へ向かう。


「真白さん、確かお願い事とかしてもいいんでしたよね?」

「そうだね。神様に感謝しつつ自分の決意を表明するって感じかな」

「???」


小春ちゃんは今の話をあまり理解できていなかったのか首を傾げている。

そんな話をしているうちに拝殿までやってきた。


まずは一礼して賽銭箱に賽銭を入れる。それから鈴を鳴らし、二拝二拍手の手順を踏む。

今年は姉妹にとって素敵な一年になりますようにと願いを告げ、最後に一拝をする。


俺が参拝を済ませるとちょうど2人も参拝を終えたようだった。


「よし、それじゃあおみくじを引きに行こうか」

「はい!」


威勢のいい返事をする葵ちゃん。その顔は先程に比べて遥かに清々しくなっていた。

もちろん小春ちゃんも。



「ありましたね、おみくじ」


各自おみくじを手に取り結果を確認する。

俺は……吉か。良くも悪くもといったところだな。

ええっと、待人はすでに身近に。争事はじきに訪れるが流れに任せてよいと。


「真白さん! 見てください大吉です!」

「おお! すごいね」

「えへへ。小春はどうだった?」

「小吉だったよ……」


それから一通り本文を読み込んだ後、おみくじを結び帰宅することにした。


「私久しぶりにお参りをしたような気がします」

「そうだね。これまで初詣とか行ってこなかったもんね」

「そうなの? まあ近くに神社がなければそうそう行く機会もないからね」


2人と話しながらもなぜか待人と争事の文章が頭から離れなかった。

まるで今の状況を的確に表しているような表現だった。

あの言葉通りにいけばやがて争い事が起こるのか。

それが俺の人生にどのような意味をもたらすのかはまだわからないがおそらく転機にはなるだろうな。


そんなことを考えながら買い出しに向かうのだった。

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