第11話 アラモ砦攻防戦3
「中隊長に敬礼!」
第二中隊の兵舎に入ると、先任曹長のサラが号令をかけ、全員が俺に敬礼した。
「そのまま作業を続けろ」
命令に従い、各自、自分の装備を点検し、出撃準備を整える。
俺は副長のキャシー准尉に部隊の現状を訊ねた。
「キャシー、何名動ける」
「4人が重症で入院中で、現在出動可能なのは23名です」
「くそ、中隊の定数の半分以下か」
予想はしていていたが、かなり悪い状況だ。
「あと、起動可能なセンチュリオンは2台です」
「1台足りないぞ」
「レイザーバック4のセンチュリオンは油圧系統に問題が見つかり、現在整備班で修理中です」
Ⓡどもの大群と白兵戦になれば、センチュリオンは絶対必要だ。なのに二台とは。
「間に合いそうか」
「多分無理だとのことです」
整備班の連中が普段から、もっと気合を入れて仕事をしてれば。いや、今は考えても仕方ない。
「ウオーヘッド23名にセンチュリオン2台か。これでやるしかないな」
「シン、あたしらはあんたの命令さえあれば、地獄の底までついていくよ」
キャシーはいつもと同じように自信満々に答えた。16歳の金髪、そばかす娘。本当に頼りになる相棒だ。
砦中に警戒警報のサイレンが鳴り響くなか、俺も自分の装備を整える。
バトルスーツの上から、各装備を取り付けていき、ヘルメットを被る。生まれながらの殺し屋、ウオーヘッドの血が騒ぐ。
「大隊長から、中隊長に連絡です」
新兵のジムが、やや緊張気味に俺に受話器を渡してきた。
「こちら、第二中隊のシンです」
「中尉、ドローンで索敵した結果、敵勢力は総勢5千を越える」
戦闘指令室の大隊長、志津香少佐の声からはまったく動揺を感じない。俺は中隊の現有戦力を正確に伝えた。
「大隊長、我が隊の出動可能な兵力はウオーヘッド23名、センチュリオン2台です」
「・・・厳しいな」
「他の隊はどうですか」
「整備班やここの人員を入れても、300人がいいところだろう」
300VS5000、これは昼間の戦い以上に厳しいものになるぞ。
「けど、やるしかない。そうでしょ」
「ああ、その通りだ。とりあえず君たち第二中隊は第五監視所の後方で待機していろ、追って指示を伝える。現在、トリポリの師団司令部に司令部直属の第七空中機動部隊をこちらに派遣してくれるように要請している」
空中機動部隊といえば、ガンシップとヘリからなる師団の虎の子の部隊だ。連中が俺たちのために派遣してくれるかどうかは怪しいが、期待するしかない。
「間に合いますかね」
「わからん、とにかく現在の兵力で持ちこたえるしかないだろう。君の中隊もすぐに部隊を所定の位置に展開してくれ」
やはり、頼れるのは自分と仲間だけということになるのだろう。
「了解しました」
俺は受話器をジムに返すと、ほぼ出動準備を終えた中隊の部下に向かって、隊長として、全員に現在の状況を伝えた。
「みんなも、もう状況を理解してると思うが、現在、このアラモ砦は約5000の敵勢力に攻撃を受けている。特に第五監視所のある西側は敵に突破されるのは時間の問題だろう。我々は完全武装で、これより第五監視所の背後に移動し、そこで迎撃態勢をとる。何か質問は」
誰も何も言わない。ただ、その表情から、これから自分たちが何をすべきか理解していることが分かった。
「みんな、我々、ウオーヘッドは人類を肉袋どもの脅威から救うため生まれてきた。そのことを肝に銘じ、各自死力を尽くして戦うことを希望する」
全員が「おおー」と叫び声を上げる。まったく、頼もしい連中だ。
「もしも、俺たちが今日のこの戦いで死ぬことがあっても、心配はいらない。我々ウオーヘッドは何度でも生まれ変わって、奴らがこの地球上から絶滅するまで戦い続け、そして、最後には必ず勝利する。我々は奴らを殺すために生まれてきた。そのことを忘れるなよ」
俺が話を終えると、従軍司祭でもあるキャシーが祈りの言葉を述べた。
「我が中隊に人類の加護があらんことを」
全員が黙とうした後、サラが大声で中隊全員にハッパをかけた。
「よーし、てめーら、これから、肉袋相手にパーティータイムだ。ケツの穴に気合を入れろ!」
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