第10話 アラモ砦攻防戦2


Ⓡの群れが地雷原に突入してきた。


地面からはあちらこちらから炎の火柱が立ちあがり、Ⓡの肉片が空中にばら撒かれる。


「ちくしょー、やつら地雷でバラバラになった仲間の上を移動してくるぞ」


爆散した仲間の死体の上をⓇが列をなして押し寄せてくる。


「迫撃砲の支援は、まだか」


Ⅿ601軽機関銃を撃ちまくるダニエル伍長。横ではハッサン上等兵がRk95アサルトライフルで地雷原を超えたところにある鉄条網で身動きができなくなってるⓇたちの頭を狙い撃ち、次々とⓇの頭が風船のように破裂する。


「ダメだ、まったく効果がない」


砦からの弾丸の嵐にも、まったく怯まず、Ⓡの大群の先頭は鉄条網を突破しようとしていた。


そこを越えられたら、監視所のバンカーまでは塹壕があるだけで、目と鼻の先だ。


「くそー、増援はまだか。このままじゃ、20分ももたないぞ」


ダニエル伍長とハッサン上等兵は、このバンカーが自分らの墓穴になると覚悟を決めた。




「状況は」


カミンスキー中尉から連絡を受けた志津香大隊長は、会話を切り上げ、俺を連れてすぐにオフィスを出て、戦闘司令室までやってきた。


大隊長に状況を説明するカミンスキー。状況を即座に理解した彼女の決断は早かった。


「ただちに大隊全員に迎撃態勢をとらせるため非常呼集を発令する。ドローンを飛ばして、敵勢力の全体の確認も急がせろ。支援の80mm迫撃砲の準備は」


「いつでもいけます」


迫撃砲陣地からの連絡をカミンスキーは大隊長に伝えた。


「よし、ただちに支援砲撃開始、ドローンの準備は、まだか」


「10分で出せるとのことです」


「5分でやれ、と言え」


作戦室の全員にテキパキと命令を下す志津香少佐。


まだ15歳の少女とは思えないほど見事な采配ぶりだ。


俺も自分の隊に戻って迎撃態勢をとらないと。


「少佐、自分は第二中隊に戻ります」


「許可する、動ける者は全員完全武装で迎撃準備をさせろ」


「了解」


俺は敬礼してから、作戦司令室を飛び出していった。


「センチュリオンは何台稼働できる。各中隊に直ちに確認させろ」


司令室からは、大隊長が大声で指示を出すのがまだ聞こえていた。




俺は第二中隊の兵舎に向かって全力で走る。


西の方角から凄まじい爆発音が聞こえ、照明弾の明かりで、砦全体が昼間のようだ。


80mm迫撃砲弾が、西側の地雷原を越えたⓇどもをせん滅するため、俺の頭の上を飛び交う音が聞こえる。


仮設兵舎からは非番の兵士たちが、飛び出してきて、次々と装備を手にとり、自分の持ち場へと走っていく。


俺は走りながら、轟音で誰にも聞かれないことをいいことに大声で悪態をついた。


「クソッタレ!今日はいいとこなしだ。まったく運に見放されてるな!なのに、どうして、こうも血が騒ぐんだ」


そして、心の底から湧き出る、どうしようもない、俺の魂の叫びをぶちまけた。


「俺は戦争が好きだ、殺し合いが好きだ、肉袋どもをバラバラにして、ミンチにして、その血を浴びるのが死ぬほど好きだ、俺は戦争狂いのイカレ野郎だあああ!」

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