第6話 レイザーバックの死闘4

「マック、エンジンが焼き付いても構わない。とにかくここから・・・」


車内に戻った俺が目にしたのは、3年間一緒に戦ってきた、中隊一の色男のマックが、運転席の横の窓の外に取り付けた金網をこじ開け、窓を割って入ってきたⓇによって、生きながら頭をかじられ、頭蓋骨の中の脳みそを食われてるところだった。


「このクソ肉袋どもがああ!」


俺のスパス9から発射された散弾は、マックの首から上とともに侵入してきたⓇどもの上半身を瞬く間にミンチに変えた。


・・・マック。


すまん、頭を吹っ飛ばしちまって。


だが、今は感傷に浸ってる時じゃない。


「サラ、こっちに来て、手伝ってくれ」


サラは機銃座から車内に滑り降りて、上のハッチを閉めた。


「なんだい、ボス・・・うわ、ひでーな」


さすがの「ブッチャー」も運転席の惨劇に一瞬、たじろいだが、すぐにいつものタフな兵士に戻った。


無線手のジムは床に嘔吐している。無理もない、まだ12歳のガキだ。


俺はマックの遺体を助手席に移し、自分でハンドルを握り、車を発進させた。


「サラ、俺の真後ろについて、窓から入ろうとする肉袋どもを、そこのスパス9でブチ殺してくれ」


「了解、ボス」


サラは俺のスパス9を掴むと、運転席の真後ろに付き、銃身を俺の顔の左横にもってきた。


「なるべく、静かに撃ってくれ」


「まあ、努力はしてみるけどな」


次の瞬間、運転席横の穴からⓇが一匹頭をつっこんできた。


「くたばれ、クソ肉袋、マックの敵だ!」


サラが引き金を引くと、左耳のすぐ横のスパス9の銃口から轟音とともに散弾が飛び出し、俺の顔から数十センチしか離れていないⓇの頭部が爆散した。


「わりーな、ボス。やっぱ、無理だわ」


Ⓡの血や肉片が顔に飛び散るにも嫌だが、とにかくその音にまいった。


完全に左耳の鼓膜をやられちまった。


だが、そんなこと言ってる場合じゃない。


このままじゃ、中隊全員がⓇどもの餌食になっちまう。


他の小隊から、無線を通して悲痛な叫びが聞こえてくる。


「こちら、レイザーバック3、なんとか持ちこたえてるけど、長くはもたないわよ」


「シン、なんとかしてくれ。このままじゃ皆殺しになっちまう」


とりあえず、レイザーバック3と4は何とか持ちこたえてるようだが、Ⓡどもに突破されるのは時間の問題だろう。


「ジム、大隊本部に航空支援、ドローンによるナパーム攻撃を緊急要請しろ!」


「しかし、中隊長、今、ナパーム攻撃を受けたら自分らもまる焼けになるんじゃ」


「そうだ。だから、いちかばちかに賭けてみる」


俺は目の前にある廃墟と化した赤い屋根の大きな建物に向かってハンドルを切った。


「ボス、あれって、大昔の建物だろ」


サラはスパス9に散弾を補充しながら、前方の建物を指さして尋ねた。


「ああ、あそこに車ごと突入して、ナパームの直撃をやり過ごす」


「でも、あんなボロボロの廃墟じゃ、とても防ぎきれねーだろ」


「だから、賭けなんだよ、レイザーバック3,4も俺に続け!」


俺の命令に従い二台の装甲車は、なんとかⓇどもの囲いを突破した。


そして、二台の装甲車と数百匹のⓇどもを引き連れて、俺は廃墟と化した建物に車を突進させた。


「大隊本部からです「こちら、フォックスキャッチャー、要請を受理した。5分後アルバトロスがナパームを投下する。全人類の加護があらんことを」以上です」


「よし、中隊全員,傾注。これより5分後にナパームが投下される。全員完全防護体制をとり、酸素マスクを着用のこと。酸素マスクをしないと肺を焼かれるぞ」


サラが自分の準備を終えると、運転している俺に酸素マスクを着けてくれた。


「貸しだからな、ボス」


猛スピードで建物に迫る三台の装甲車。後ろには数百匹のⓇの群れを従えて。


上空の遥か彼方から、ドローンのジェット音が聞こえてくる。


「突っ込むぞ、サラ、ジムと後ろに避難しろ」


三台の装甲車が建物に突入するのと同時に攻撃用ドローンのアルバトロスが飛来し、ナパームを投下した。


「くるぞ、全員耐熱、耐ショック防御」


レイザーバック1は廃墟の壁に突っ込み、後続の二台は壁にぶつかる直前に急停車した。


投下されたナパームが俺たちを追ってきたⓇの群れの真上に落ちてくる。


全員が前かがみに身体を丸めて、着弾時のショックに備えた。


数秒後、廃墟と化した建物を中心に半径600メートル一帯が灼熱の炎と爆風にさらされた。


そして、燃え盛る炎の轟音と焼き尽くされる肉袋どもの悲鳴が、辺り一面に長々と轟きわたった。



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