第5話 レイザーバックの死闘3

「おら、おら、おら、おら、どうした肉袋ども、かかってきやがれ、まとめてミンチにしてやるぜ」


サラが50口径重機関銃を撃ちまくりながら、大声で叫ぶ。


瞬く間に、レイザーバック1の周りには肉片の山が築かれる。


「サラ、11時方向に群れの薄いところがある。あそこに火力を集中しろ」


「OK、ボス」


サラは回転機銃座を11時方向に向けると、容赦なく50口径弾を浴びせかけた。


すでにキャラバン全体にⓇの大群が群がっている。


装甲車を走らそうにも、次から次へと前にⓇが飛び出してきて、引き裂かれた肉片でボンネットの上に山ができ、ろくに前も見えない。


また、ひき殺したⓇの血や内臓でタイヤがすべり、後ろの車両も、いっこうに前進できないでいる。


「くそ、このままじゃ、らちがあかない。マックもっとアクセルをふかせ」


「もう、やってる、これ以上エンジンに負担をかけたら、ぶっ壊れるぞ」


外の様子を見ると、Ⓡの数は増える一方だ。しかも、完全に陣形が崩れ、各小隊は孤立し、最悪の状態だ。


一台の装甲車に50匹はⓇがしがみついている。


「頭だ、頭を撃て」


俺は車内後部の部下に叫ぶ。


銃眼から突き出したRk95アサルトライフルの激しい銃声が狭い車内で響き渡り、耳がおかしくなりそうだ。


「レイザーバック2から中隊長に緊急連絡です」


初陣のせいか、真っ青のジムが、震える手でヘッドホンを俺に手渡してきた。


「こちらレイザーバック1、どうした」


「シン、もうだめだ、これ以上モタない。航空支援を要請してくれ」


あの臆病者め。肝心な時に役に立たない。


「だめだ、今、空爆されたら、俺たちもまる焼けになるぞ」


俺たちの乗っているRPG六輪装甲車は頑強な作りだが、ナパームの直撃を食らったら、車体はともかく、乗員は生きながら蒸し焼きにされてしまう。


「でも、機銃座のマルコがやられて、Ⓡの奴らが車内に入ってこようとしてるんだ」


「待ってろ、今、クレネードランチャーで車体の上のⓇを吹き飛ばしてやる」


「だめだ、そんな時間がない。うわ、奴らが入ってきた。くるな、くるな」


俺は椅子の後ろから、スパス9ショットガンを取り出し、上部ハッチを開けて、装甲車の上に身体を乗り出した。


その途端、3匹、Ⓡが俺に向かって飛び掛かってきた。


俺のショットガンが火を噴き、Ⓡは三匹とも頭を吹き飛ばされ、地面に転げ落ちた。


「何しにきたんだよ。ボス」


サラが50口径の弾をばら撒きながら、叫んだ。


「レイザーバック2を支援する」


車体上部中央に設置してある自動装てん式20mmクレネードランチャーまで這っていき、レイザーバック2に取り付いてるⓇを皆殺しにするため、銃口を向けた。


レイザーバック2は他の3両から、かなり離れた位置まで移動しており、ここから80メートルは距離がある。乗員が脱出したとしても、Ⓡの群れの中から救い出すのは困難だ。


「危険だが、センチュリオンを起動させて、救出するしかないか」


その時、レイザーバック2の車体の中から、突然炎が噴き出した。


「バカが。中で手りゅう弾を使いやがったな」


サラが吐き捨てるように呟いた。


レイザーバック2の車体の中から、火に包まれた俺の部下たちが飛び出してくる。


Ⓡにとってはいい獲物だ。やつらは少しくらい身体に火がついたってまるで感じない。


「ひいいいいー、熱い、熱い!」


「助けて、誰か助けてー!」


泣き叫ぶ部下たちに容赦なくⓇが群れになって遅いかかる。


「くそー、肉袋ども」


サラが援護射撃をするが、焼け石に水だ。


俺は、俺の部下たちを貪り食ってるⓇの群れにグレネードを4発続けてぶち込んだ。


凄まじい爆発とともに、俺の部下を襲ってたⓇが30匹以上一度に吹き飛んだ。


これで、部下も苦しまずに死ねただろう。


その後、レイザーバック2の車体も爆発、炎上した。


第二小隊は全滅。アルベルト、やつの悪運もとうとう尽きたか。


「ここは頼む」


サラにそういうと、俺は再び、車内に戻った。

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