第3話 レイザーバックの死闘1

「Ⓡの連中、今日は襲ってくるかな」


「さあな、昼間は連中穴倉にひっこんでるんでから、運悪く「不眠症」に出会わなきゃ、無事に時間内にエリア47まで着けるだろ」


俺と運転席のマックは、いつもと変わりない会話をしていた。


Ⓡとは人食い鬼=ラクシャサのことである。以前はゾンビとか、いろいろな呼び方があったらしいが、今では前線ではⓇで統一されている。


人を食う死人、Ⓡの実態はほとんど知られていない。ただ長年の俺たち前線の兵士たちからの報告から、1、Ⓡは生きるために肉を食うのではなく、何年も飲まず、食わずに行動が可能。2、Ⓡには視力はほとんどなく、音と生き物の臭いに反応して襲いかかってくる。3、Ⓡの腕力や脚力は大型哺乳類なみに強く、生身の人間では、まず勝負にならない。4、Ⓡは昼間は薄暗い場所で休んでいて、主に夜に行動する。

5、Ⓡの活動を停止させるためには頭部を破壊するか、身体全体を破壊する必要がある。


他にも細かいことが報告されているが、俺たち前線の兵士たちが知っておく情報はこの程度で十分だ。ついでに「不眠症」とは昼間でも単独で行動するⓇのことだ。




俺たち人類統合軍兵士、通称「ウオーヘッド」は12歳から19歳までの少年、少女で編成されている。


全員、親はおらず、人口受精で生まれた子供たちだ。


各エリア内の養育施設で育てられ、12歳になると新兵として各部隊に入隊する。


俺たちの兵役終了までの生存率は1割程度で、ほとんどの仲間は兵役を終えるまでに死亡する。


兵役を終えても俺たち「ウオーヘッド」はエリアに居住することは認められてはおらず、佐官以上の指揮官や教官など後方の司令部勤務に就くことになる。政府はエリア内の治安維持の関係から、外の情報はなるべく一般市民に知られたくないのだ。


それが俺たちの運命だが、そのことで不平不満を言う奴はいない。


俺たち「ウオーヘッド」は人類を守るため、命を捧げていることを誇りに思っている。


中には女々しいことを言って、人類のために死ぬことを嫌がるクソッタレもいるが、そういった輩は滅多にいないし、どうせ戦闘になれば真っ先に死ぬから問題ない。


もし任務に支障があるようなら、隊長の権限で前線で裁判なしに「戦闘拒否」などの罪状で処刑できる。非常に合理的な制度だ。


俺たちは、誇りとともに英雄として死んで墓穴に入る。


それこそが俺たちがこの世に生まれてきた証なのだ。




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