第13話

「柊真!」

「和!」

いまさら、小雪さんのペアが『やまと』さんだと知る。

柊真は、私たちの声に気づいて、自分の手首を指さした。

手首で、キラッと何かが光る…腕輪だ。

しかし、柊真の手首は縄で縛られている。

今の状況を整理しよう。

柊真が目の前にいる。

きちんと腕輪も持っている。

しかし、罪人であるため、手首を縄で縛られ、身動きが取れない。

私が突っ込むしかないけど、柊真の周りには罪人の壁。

うーん、どうしよう…

「これは、突っ込むしかないっしょ!」

隣で響く声、そして罪人たちの方へ走って行く人影。

ちょちょ、小雪さん⁉︎

私が呆然と見つめる中、小雪さんは、罪人にタックル!

四つん這いになって倒れた罪人を踏み台にして大ジャンプ!

そして、青年のところにダイブ!

そしてその途端、バビュッと一瞬光ったと思うと二人は消えていた…


明、早く来いよ。

俺は心の中でそう思う。

目の前で和さんと、突っ込んできた女性が消えたとき、ちょっと希望が見えた。

でも、わかってる。明には無理だ。さっきの女性みたいな芸当、できっこない。

その時、ふと、昔の会話を思い出していた。


「うちってね、セゾン代々受け継がれる石煮えの言い伝えがあるんだよ。」

「先祖代々受け継がれる古の言い伝えな。」

「えっとね、『光し輪が宙を舞うとき、二人の子神に隠されたし。』みたいな?光りし輪が宙を舞うときまでは確実なんだけど。」

「ふーん。」


そこまで思い出して、俺はハッとした。

その二人の子とは、

明の近くに立つ明そっくりの女性が、明の先祖だとしたら。

俺たちが消える様子を見て、

それを言い伝えとして残したのではないか。

もし、そうだとしたら光りし輪とは

それが宙を舞う…ということは、これを投げるのか?

俺は、動きにくい手で必死に腕輪を取る。

そして、思いっきり、宙に投げた。


き、消えた?

てか大丈夫だったかな、踏み台にされた罪人。

って、罪人の心配してる場合じゃない。

どうしよう、私にあんなことできないし。

そう考えている時、柊真が腕輪を取ろうとしているところを見て、思う。

もしかして、投げるつもり?

わかった、それなら私も投げる。

私は腕輪を外す。

そして、柊真と同時に投げる。

何も聞こえない。その中で、


カチッという音だけが響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る