第10話

「これで、良いかの?」

後ろから声がして、私は振り返る。

そこには、笠を被った十三、四歳くらいの女性が一枚の小判を差し出しながら立っていた。

その女性が顔を上げた時、私はボーゼン。

だって、だって…

「ドッペルゲンガー⁉︎」

驚いたのは、私でもなく、女性でもなく、小雪さん。

小雪さん、ここは私が驚くトコだから。

でも、本当に、私にそっくり。

『どっちが明でしょう?』クイズを柊真に出しても、きっと正解できないと思う。毛穴の奥まで見つめられても。

もしかして、この人って…

「静姫!…様。」

小雪さん、それ私のセリフ!

でも、慌てて『様』ってつけたところが可愛い。

年上に可愛いと言う私って…失礼?

おっと、話が脱線した。

「静姫が…2人⁉︎」

蔦さん大混乱。

そうだった、私、『わらわが静姫じゃ』って蔦さんに伝えてたんだった。

ごめんね、蔦さん。でも、説明してる時間がないの。

「わらわは静姫じゃ。」

あ、静姫の方が若干声が低い。若干…

「え、こちらの方も静姫と…」

わっ!罪が露見した!

「わらわが静姫じゃ。」

静姫(本物)が言う。

「いや、わらわが静姫じゃっ!」

開き直った静姫(偽)が言う。

「わらわが、一両払うぞ。」

うっ。おかねを出されると弱い。

「はい、そうです。私は静姫ではありません。」

素直に投了、そして小雪さんと土下座。

「「ははぁっー」」

「表をあげよ。私も関所破りをしようと思ってな、ついついてきてしまったのじゃ。」

はあ、なんで関所破りしたんだろ。

そう言いながら静姫は、小判を蔦さんに渡し、言った。

「これでよかろう。では、わらわは行く。そなたたちはちと話がある。ついてくるのじゃ。」

指名された私たちは、静姫について行った。


歩いて行く三人の背中を見つめながら、わしは箱を出す。

これがいきなり目の前に現れた時は度肝を抜かれたが、今はもう慣れた。

箱の出っ張りを押すと、箱から声が流れてきた。

「もしもし。」

「いったぞ。」

「そうか。すまんな、わざわざ。」

「いえいえ、楽しかったですよ。金も手に入ったしさあ。」

「そうか(笑)。じゃあ、もう大丈夫じゃ。ありがとう。」

「いえいえ」

そう言った途端、箱から声が流れなくなる。

俺いいことをしたということに、向こうではなっているだろう。

でも、俺はもっと金が欲しい!

関所破りを密告すれば、褒美が貰える。

このままで済ませるわけには、いくまい。


「そなたたち。」

突然静姫に話しかけられる。

「「はい?」」

「わらわの護衛をしてくれぬか?」

はぁっ⁉︎


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