第9話
「づがれだ〜」
「おトキって、何部?」
「天文部です。」
「文化部か〜。最近運動してないでしょ。」
「してないですね。」
「じゃあ、大変だわ。だって伊豆諸島近くまで歩くんだよ。」
どうやら二人の流刑先は新島(?)らしく
(よく分かっていない)、とりあえず伊豆半島を目指してテクテク歩いているのだが…遠い。歩いてるから余計に。
「無理です、歩けません。」
「歩け〜。歩かないといけないぞ〜。」
「ちなみに小雪さんは何部なんですか?」
「陸上部。」
「うわー、長距離歩けそう。」
「そうなの、長距離走やっててラッキーってなってる。」
「いいなー、いいなー。」
「でしょ…って問題はそこじゃなくって。」
「え、これが一番問題でしょう?」
「いやいや、おトキ、関所どーする。」
「あ」
そうだった。私って静姫という、どこぞの大名の娘に激似なため、関所を通れない可能性があるんだった。(第6話参照)
「仕方ない、ここは関所破り案採用ね。」
「え!それって重罪なんですよね!」
「背に腹。関所は確実に通れないけど、関所破りはバレない可能性もあるし。」
「えー(汗)」
それから数日が経った。
「あれが、箱根の関所!」
「なーにうきうきしてんのよ。あれは通らない、てか通っちゃダメだから。」
「そうですよね。」
「私たちが通るのはあっち。」
そこは茂みを通り越して、もはや森。
着物がやばいかも。
「行こ。」
その時。
「君たち、関所破りでもするのかね。」
バレた!
「あ、いえ、その、あの…」
小雪さんしどろもどろ。
「安心せい、わしは味方じゃ。関所破りの手伝いをしているもんじゃ。」
「あ、関所破りの
「関所破りの…蔦?」
「椿さんに教えてもらったのよ。関所破りするなら蔦がいいって。」
CMみたいな言い回し。
一方蔦は、私の顔をまじまじと見、やがて驚いたように目を見開いた。
「これはこれは、静姫ではありませんか!」
「いや…」
否定しかけた私を、小雪さんがちょいちょいと肘でつつく。
否定しない方がいいのかな。
「そうじゃ、わらわが静姫じゃ。」
言い回し、合ってた?
「お目に書かれて光栄でございます。さあさあ、こちらへ。」
蔦について行くと、そこには穴があった。
「ここにお入りください。」
「「え、ここに!…かの。」」
「地下から行った方が、役人にきづかれにくいです。穴の中なら立てるくらいの広さはあるため、その綺麗な着物も汚れますまい。」
「「はあ。」」
私たちはしぶしぶ蔦に続いて穴の中に入った。
「出口だぁ…」
「ここは関所の向こう側でございます。もう安心して頂けます。」
「ありがとうございます。」
「あのぉ…代金を…」
「え!」
「代金は、一両でございます。」
一両!
「あの、わらわは一両も持ち合わせていないのだが…」
「しかし私めは、姫のために罪を犯しておりまする。それほどの価値はあるかと。」
絶体絶命!
「これで、良いかの?」
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