第5話

「ああ~、ひまっ!」

叫んでごろっと寝っ転がる私―明―。

江戸に来てから早一か月。なんの手掛かりもない。

「そうよね~。ご飯作って食べて寝てご飯作って食べて寝ての繰り返しだし。」

小雪さん、そうだよね、そうだよね……

「「はよ元の時代に戻りたい!」」

狭い長屋に私達の声だけが響く。

「お二人さん、そんなに暇なの?」

そうなんですよ、椿さん。

「じゃあ、江戸の女の生活ってもんを見せてやろうじゃないか。ちょっとおいで。」

「「はあ……」」

てか、

「小雪さん。」

「何?」

「椿さんて何者なんです?常に家にいますけど。」

「さあ~良く分かんないのよねそれが。本人は、元々武士の子供だったんだけど、好きな人が出来たのに、縁談勝手に親に進められててやんなって逃げ出したって言ってるけど、そんなことある?」

「さあ、あるんですかね?」

「何やってんだ、行くよ。」

「「へい、承知しやした!」」


「女子の心得、其の一!外は渋め、中は派手めな色で!」

ふむ。

「外は灰色や茶色の渋い色。でも裏地は赤などの派手な色にするのがいいんだ。」

そう言いながら、店先にあった着物を手にする。

「こんなかんじのやつ。」

ああ、分かりやすいたとえ。

「お嬢さん、この着物、買ってくかい?」

「いや、大丈夫だよ。」

買ってくれると期待してた自分がばかだった。


「女子の心得、其の二!浮世絵を買う!」

あ、浮世絵なら知ってる。

「市川團十郎がいいのよ~♡よし、二人のために買ってやろうじゃない!ええっと、団十郎様が綺麗に映ってるのは―っと(^^♪」

椿さん、自分のために買ってますよね。

「あれ?これっておトキじゃない!?」

はい!?











参考文献

『超ビジュアル!日本の歴史大辞典』監修 矢部健太郎 発行 西東社 2015年

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