第4話

一方その頃俺−柊真–は……


気づくと、俺の目の前には城がドドーンとそびえたっていた。

俺の目は、点、点、点。

しばらくして、状況を理解した。

吹き抜ける生暖かい風。これはVRのような虚空ではない。現実だ。

ホントに、タイムスリップしてしまったのだ。

……と、ちょっとカッコよく冷静そうに言ってみたはものの、全然冷静じゃない!

タイムスリップなんて、そんなのあるわけがない!

あるわけが、あるわけが、あるわけが……うわ、『あるわけが』が、ゲシュタルト崩壊を起こしてきたぁ……

俺は脳を休めるため、木陰へと向かう。と、その時!

「曲者!」

後ろから声がして、振り返ると、侍が襲い掛かってきているところだった。

「うわっ!」

間一髪でよけたものの、侍が手にするやいばは止まることを知らなかった。

……なんて、ちょっと文学っぽく言ってみたけど、そんな冷静じゃない!(二回目)

「ちょっと、ストップストップ!話し合おう!」

「こっちも曲者の侵入を許すわけにははいかぬ!などできない!」

「え~!」

「「……ん?」」

ちょっと待って、襲われてたもんだから冷静になんかなれなかったけど、江戸時代の人に『ストップ』なんて通じるか? 侍も固まってるし。

ま、まさか……

「「君も、タイムスリップしてきた系の人⁉」」

しんとした空間に俺らの声だけが、響いた。


「やー、まさか君も『タイ脱』のモニターだったなんてね。」

この人はやまとさん。俺と同じで楓学園中等部の生徒。三年生だから、先輩。

「和さんって、どうして『タイ脱』のモニターに?」

「僕と部活が同じ女子に、『祖父が面白いもの作ったらしくって、誰かと二人で来てって言われたんだけど来る?』って言われてついてったらこうなった(笑)」

「あらら、大変でしたね(笑)……って、笑い事ではないでしょう!タイムスリップですよ、!」

「まあ、こうなってしまった以上、この現状を楽しもうよ!」

ポジティブシンキングだな~和さん。俺も、そんな風に考えられたらなぁ……

「さーて、これからどうしようか。柊真君もこのままいるわけにもいかんしね……」

そういって和さんは硬直。

―五分後―

和さん、そろそろ動いてくれんかな……

「そうだ!柊真君を僕の弟にしちゃおう!」

「……へ?」

和さんから飛び出した爆弾発言。

「僕は、今松太郎って名前でこのお城で武士として働いてるんだけど、柊真君の名前を梅次郎にして、僕の弟としてこのお城で武士として働かせてしまおう!」

「はい~~~~~~~~~~~!?」


てなわけで、そのまま話は決まってしまい、俺は武士になることになった。

服は和さんに借りて、お殿様にもOKしてもらった。

でも、この決断が、俺らのクリアの大きな障害となっていく……

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