第2話

「「はあ~~~~~~~~~~~~っ!?」」

だってありえないでしょ!

こんな小さなカプセルにか弱い乙女(?)を閉じ込めた挙句、ですと!?

やー、さすがに私でもそのギャグは言わん。

「まあまあ、冗談はよしてよ!」

「冗談ではない。本気じゃ。」

ゴーン

驚いて前のめりになり、カプセルに頭をぶつけた私はへたり込む。

ノックアウト。勝者、博士ぇ……

「君達には、これからタイムスリップ型脱出ゲーム、略して『タイ脱たいだつ』のモニターとして、江戸にタイムスリップしてもらう。二人は離れたところからのスタートじゃから、江戸ライフを満喫しながら、お互いを探すのじゃ。

これから渡す腕輪同士をくっつけたら、元の世界に帰ってこれるぞい。」

「質問質問。それってVRゴーグルとかで、本当にタイムスリップするわけじゃないんだよな……?」

柊真の質問に博士は即答。

「本当にタイムスリップするんじゃよ。」

「「ふぉえ?」」

もう、驚きすぎて変な声しか出ない。

「何を驚いているんじゃ。その名を知らない人はいない不可能ゼロの天才博士、野田葉佳瀬とはわしのことじゃ!」

「すみません、私、あなたのこと知りませんでした!」

ゴーン

驚いて前のめりになり、机に頭をぶつけた博士はへたり込む。

ノックアウト。勝者、明ぃ――――――――!

よっしゃ、勝った!(何で争ってんだ。)

「と、とにかく、詳しいことは『先客』に聞いてくれ。さあ、江戸へとしゅっぱーつ!……この掛け声良いな。実用化した時の掛け声にしようか……ブツブツ。」

商売のことを考えながら、博士は手元のボタンを押す。

その時、まばゆい光が放たれて、目がくらんで……


ガヤガヤ

光が消え、あたりがうるさくなってきた。

ゆっくりと私は目を開ける。

目が慣れてきて、あたりの様子が見えてきたとき、私は息をのんだ。

立ち並ぶ木造の家。

土の道路。

富士山。

そして、ちょんまげの男性……!

「え、江戸ぉ……⁉」

ただでさえ働きの悪い思考回路が完全に停止。

十秒ほどの復旧作業の後、私の思考回路は運転を再開した。

江戸、江戸、えど、エド、edo……

『江戸』がどんどん崩壊していくよ。

落ち着こう、落ち着こう。

ここは江戸。私は、相方の柊真を見つけないと、元の時代に帰れない。

うん、分かった。で、問題の腕輪は、……あ、ついてる。

これがVRの可能性は……ない。頭になんかついてる気配ゼロ。

で、私はこれから……どうしようもない!

とりあえず、持ち前の気さくさで、話しかけてみよう。

「すみませ~ん……」

「はい、何です?」

しまった、話すこと、考えてなかった。

「えーっと、あの……迷子になってしまって……あっちには何がありますか?」

「あそこには長屋だけど……それにしてもあんた、奇抜な恰好ねぇ。異国人?」

げっ。服装が元の時代のまんまだったってことに、今気づく。

「あ、いやっ、あ、ありがとうございましたっ!」

とりあえずお礼を言ってから、私は逃走。

その後、好奇の眼でじろじろ見られるわ、挙句の果てに異国の者だとかどーのこーの言われて切りかかられるわ、もう大変。

へっとへとで歩いていると、私を女の子がじろじろ見てきた。

私よりちょっと上くらい。水色の下地に雪があしらわれた着物を着ている。切れ長の目に、整った鼻が綺麗。

そして、じろじろ見られてることに関しては、諦めモード。

もういいです、ご自由にご覧下さい。

半ば開き直ってすれ違いかけたその時、その女の子がガバっと目の前に立ちふさがった。

「へ、は、はいっ?え、ななななななんですか!?」

「あなた、二十一世紀から来たの?」

「へ、は、はいっ!」

言ってから?マークの大増殖。

今、二十一世紀って言った?

なんで、分かったの?

まさか、噂の『先客』?

私と同じ立場の人?

「も、もしかして、私と同じでタイ脱のモニター……」

「しぃ―――――――――!とりあえず来て!」

「え、ちょ、ちょっと待ってください!?」

女の子に引っ張られながら、私は江戸の町を走った。

 

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