タイムスリップ型脱出ゲームへようこそ
きなこもち
第1話
「お、柊真だ。こんなところで会うなんて奇遇だね。」
「かっこよさげな文面でごまかすな。オレのこと待ってたくせに。」
「ぬっ、ばれたか。つまーんなーいの。」
私―
でも私は寂しいから、たまに柊真が帰ってくるところを待ち伏せているのである。ふっふっふっ
「おやおや、お疲れのようですな、柊真クン。」
「そりゃ疲れるわ。入学したばっかで慣れないことも多いのに、お前に絡まれるんだから、当たり前だろ。」
「……私を若干ディスってた気がするのはまあいいとして、肩、揉もうか?」
「お前の肩揉みは、無駄に疲れるからやめてくれ。」
「あーっ、またディスった!」
「事実を述べたまでである。」
「はーっ!?」
ギャーギャー言いながら歩いていたら、いつの間にか知らない道。
「え、ここどこ?私は誰?」
「お前は明、中一で……って、この状況下でもギャグを持ち込むのか。メンタル強いな。」
「だって、『ここどこ』ってきたら、『私は誰』ってこないと引き締まらないじゃん。」
「……お前のこだわりは分かった。だが今はここから出るのが先決だろ。ええっと、この道は……」
その時、頭上からパンパカパ~ンと音がして、紙吹雪がはらはらと降ってきた。
「やったね、柊真!分からないけど、きっとこの道通った人一万人目だったんだよ!」
「おお、やったな……んなわけねえーだろ!もし仮にな、仮に、そうだったとして、その統計とってるやつ暇なのか?」
「おめでとうございます!あなた方は、この道を通った一万人目でした!賞として、海外旅行にご招待します。右手にある家へお入りください。」
「おお、やったね、柊真!」
「……こいつ、暇なのか?」
半信半疑の柊真を引っ張って、私は家へと入っていった。
「来てくれましたか!どうぞ、お入りください。」
出てきた男の人は、六十代ぐらいで、白いひげに白衣を着ている。いかにも博士ってカンジ。ってことは……
「ねえ、柊真!もしかしたらあの人の発明品で海外旅行に行けるのかも!」
「ん、まあ、その可能性は否めない。明にしてはいいこと言うな。」
「『明にしては』が余計なんですけど~!」
「どうされたのですか?どうぞお入りください。」
そう言われて、私達はあわてて部屋に入った。
「席に座ってください。」
促されて、私達はメカニックな椅子に座る。
その時、ウィーンと音がして椅子が持ち上がり、私達は椅子ごと、出てきた透明のカプセルに収められた。
「なに、ナニコレ⁉」
「どういうことですか!?」
「なに、心配するな。君達には今から、江戸時代にタイムスリップしてもらうだけじゃ。」
「「はぁ~~~~~~~~~~~~~っ!?」
きっと人生で一番であろう二人の大声が、カプセルの中でこだました。
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