タイムスリップ型脱出ゲームへようこそ

きなこもち

第1話

「お、柊真だ。こんなところで会うなんて奇遇だね。」

「かっこよさげな文面でごまかすな。オレのこと待ってたくせに。」

「ぬっ、ばれたか。つまーんなーいの。」

私―メイ―はその場で一周ターンする。

柊真シュウマは私の幼馴染。幼稚園の頃からいっつも一緒に登下校してたんだけど、中学に入ってからは私は地元の公立、柊真は私立のトップ校、楓学園中等部かえでがくえんちゅうとうぶに進学してからは別々に。

でも私は寂しいから、たまに柊真が帰ってくるところを待ち伏せているのである。ふっふっふっ

「おやおや、お疲れのようですな、柊真クン。」

「そりゃ疲れるわ。入学したばっかで慣れないことも多いのに、お前に絡まれるんだから、当たり前だろ。」

「……私を若干ディスってた気がするのはまあいいとして、肩、揉もうか?」

「お前の肩揉みは、無駄に疲れるからやめてくれ。」

「あーっ、またディスった!」

「事実を述べたまでである。」

「はーっ!?」

ギャーギャー言いながら歩いていたら、いつの間にか知らない道。

「え、ここどこ?私は誰?」

「お前は明、中一で……って、この状況下でもギャグを持ち込むのか。メンタル強いな。」

「だって、『ここどこ』ってきたら、『私は誰』ってこないと引き締まらないじゃん。」

「……お前のこだわりは分かった。だが今はここから出るのが先決だろ。ええっと、この道は……」

その時、頭上からパンパカパ~ンと音がして、紙吹雪がはらはらと降ってきた。

「やったね、柊真!分からないけど、きっとこの道通った人一万人目だったんだよ!」

「おお、やったな……んなわけねえーだろ!もし仮にな、仮に、そうだったとして、その統計とってるやつ暇なのか?」

「おめでとうございます!あなた方は、この道を通った一万人目でした!賞として、海外旅行にご招待します。右手にある家へお入りください。」

「おお、やったね、柊真!」

「……こいつ、暇なのか?」

半信半疑の柊真を引っ張って、私は家へと入っていった。

 

「来てくれましたか!どうぞ、お入りください。」

出てきた男の人は、六十代ぐらいで、白いひげに白衣を着ている。いかにも博士ってカンジ。ってことは……

「ねえ、柊真!もしかしたらあの人の発明品で海外旅行に行けるのかも!」

「ん、まあ、その可能性は否めない。いいこと言うな。」

「『明にしては』が余計なんですけど~!」

「どうされたのですか?どうぞお入りください。」

そう言われて、私達はあわてて部屋に入った。


「席に座ってください。」

促されて、私達はメカニックな椅子に座る。

その時、ウィーンと音がして椅子が持ち上がり、私達は椅子ごと、出てきた透明のカプセルに収められた。

「なに、ナニコレ⁉」

「どういうことですか!?」

「なに、心配するな。君達には今から、江戸時代にタイムスリップしてもらうだけじゃ。」

「「はぁ~~~~~~~~~~~~~っ!?」

きっと人生で一番であろう二人の大声が、カプセルの中でこだました。

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