第4話 ギルドへの依頼

「いや、そう言われましても規則なので……」

「お願いします! 妹の命が掛かってるんです! どうか、どうかお願いします!」

「……少々、お待ちください」


 ギルドの受付嬢はカウンターから出て、階段を上っていった。

 恐らくはギルドマスターに相談しに行ってくれているんだろう。


 ディリスはそわそわとしながら、戻ってくるのをジッと待った。


「待たせてすまない。君がディリス君だね?」


 やがて一人の中年男性から声を掛けられた。

 ギルドの長――ギルドマスターである。


「は、はい! そうです!」

「それで、金の代わりに『一生雑用として働く』と……。本当にそれでいいのかね?」

「はい! 依頼を受けてくださったパーティーには一生を掛けて恩を返します!」


 ディリスは依頼金を払えない代わりとして、その身を報酬にすることを思い立った。

 荷物持ちでも、家事の手伝いでも、求められれば夜の相手も辞さない覚悟で。


「うーむ……。本来こういった報酬では依頼は引き受けていないのだが、今回は特別に許可しよう。ギルドとしても力になってやりたいが、色々としがらみがあってな。これが精一杯だ、すまんな」

「いえ、ありがとうございます! それで十分です!」

「ああ。しかし、引き受けるパーティーがあるかどうかはわからないということだけは伝えておくぞ。いいな?」

「はいっ! それではお願いします!」


 希望を胸に抱え、ディリスは笑顔で帰宅した。

 しかし、その笑顔は扉を開いた瞬間に険しい顔に変わる。


「――え、エリーゼ!?」


 ディリスの目に映ったのは、玄関でうつ伏せに倒れているエリーゼの姿。

 慌てて抱きかかえると呼吸が荒く、高熱を出しているのがわかる。


 そのまま、ディリスはエリーゼを急いで病院へと連れていった。

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