六章 観想都市

第38話

 汚れた霊の肉体かたちには、男と女のそれがある。男は女の中にすんでいる魂と交わる。女もまた不従順なアダムにより、男の肉体かたちの中に在る魂たちと結ばれている。何人なんぴともこの汚れた霊から離れることができないであろう。もしそれらの霊が彼を捕らえてしまい、彼が男性的かつ女性的な力、すなわち花婿と花嫁を受けないならば。だが、誰でもその力を模擬の花嫁の部屋ニュンフォーンから受け取るのである。

 主はあらゆるわざを秘義の中で行なった。すなわち、洗礼と塗油と聖餐と救済と花嫁の部屋ニュンフォーンのことである。妻を娶った者たちにとって、この世の結婚は一つの秘義である。汚れた結婚さえも秘め事であるとすれば、ましてや汚れなき結婚はどれほどの真実の秘義であろうか。それは肉体のものではなくて、むしろ清らかである。それは欲望にではなくて、意志に属する。それは暗闇や夜ではなくて、陽と光に属する。花嫁の部屋ニュンフォーンというものは動物たちのためのものではなく、奴隷たちや汚れた女たちのためのものでもない。むしろそれは、自由人たちや処女たちのためのものである。

 誰であれ花嫁の部屋ニュンフォーンの子となるならば、光を受けるだろう。誰であれこの世にいる間にそれを受けなければ、彼はそれを他の場所でも受けないだろう。その光を受ける者は見られることもなく、捕らえられることもありえないだろう。そして何人なんぴともこのような者を煩わすことができないだろう。たとえ彼がなお世界に生活しているとしても。さらにまた、たとえ彼が世から出てゆくとしても、彼はすでに模像において真理を受け取ってしまったのである。世はアイオーンとなったのである。なぜなら、アイオーンは彼にとってはプレローマだからである。しかもそれがそうであるのは、彼一人だけに明らかな仕方においてである。アイオーンは闇の中にも夜の中にも隠されてはおらず、むしろ、完全なる日と聖なる光の中にこそ隠されているのである。

 復活とは何であろうか。模像が模像によって蘇ることはふさわしいことである。花嫁の部屋ニュンフォーンと模像による模像が真理、すなわち、万物の更新に入ることはふさわしいことである。


                  『聖書ケノボスキオン』所収「終末の花嫁の部屋ニュンフォーン」より

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