第33話
目覚めたとき、さくらはいなかった。寝起きには心細く思ったコウだが、昨夜から予想のついていたことのようにも思われた。
その日も昨日と同じ一日だった。誰一人として傍に引き留めておけない自分がやるせなく、今日も長い昼寝をしてしまった。夢に出てきたのが誰なのかも覚えていなかった。空を見上げると、何もない水色が遠くまで透き通っていた。
焼け落ちた聖堂の前を通るとき、神官に呼び止められた。
「こんにちは。この前のことは、どうもありがとうね」
「……こんにちは。べつに、何をしたわけでもありませんから」
ふと、彼女に
「実は、折り入って頼みがあるの。いいえ、別にどうという用事でもないんですけどね。少しのあいだ、神になってくれる私窩子を、私たちは探しているのです」
これが、ノッジシの刑死が起きた日からさかのぼって、一週間ほど前のことであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます