百十八の城
「まさかあんなにも怖がるとは思ってもいなくって本当にごめんなさいね。」
あゆみ先輩はそう言って何度も頭を下げてくれた。
「あゆみ姉は常にテンションが同じやから嘘かホントか分からんねんな。」
私はなんとか立ち上がるとパンパンとスカートのお尻の部分を叩いてホコリを叩き落とす。
「先輩、さっきの怪談は本当に嘘なんですよね?」
私が真剣な顔で聞くと先輩は
「即興で作った作り話よ。安心して。」
そう言ってニッコリと微笑んでくれた。
私はその言葉に安心すると気が抜けたコーラのように大きなため息をつく。
私の溜息を聞いて私の体を支えてくれている訪ちゃんは『あはは』と声に出して笑った。
「さぐみんも感受性豊かやからやと思うけど怖がりすぎやで。」
「そうかも知れないけどあゆみ先輩の話があまりにも真に迫っていたから・・・」
少ししょんぼりとしてしまう。
私の姿を見て訪ちゃんはまた声を出して笑った。
「もう、本当に怖かったんだからね。」
私はそう言って訪ちゃんに抗議するが訪ちゃんはあまり聞いてないようだったが変わりに先輩が
「怖がらせてしまって本当にごめんなさい。」
と先輩も冗談が過ぎたと反省しているのかしょんぼりとしてしまっていた。
私は逆に申し訳なくなって
「そんな・・・気にしないでください。それよりもお城を楽しみましょう!」
と空元気を出してそう言うと先輩はそんな私の姿を見てホッとしたのか笑顔で
「そうね、楽しみましょう!」
と元気よく答えてくれた。
私達は砂の丸に入るために駐車場のゲート横の側道を通って砂の丸に向かう。
不明門跡の石垣もまた立派だ。
「城下さん見て、不明門の石垣だけど駐車場のゲートが門だとして直ぐにL字に折れているでしょ?その後また右に曲がるように自然と石垣に促されるの。こいう石垣の構成を
喰違虎口、そう言えば今まで登城したお城も石垣で無理矢理曲がらされたり不便な作りになっていたけど、攻め手が直進だけを繰り返すと勢いがついて防ぐことが出来なくなるので無理矢理曲がらせるような作りになっていたのだ。
もちろんお城は迷路のように作ることで援軍を待つための時間稼ぎをするような作りにもなっている。
どちらにしても敵の勢いを削ぐことに違いは無いようだった。
お城は攻め手を攻撃するだけではなく、そうやって様々な工夫をして敵が出来るだけお城の中枢部にたどり着けないように遠回りや袋小路を駆使して少しでも時間を稼いで攻め手の勢いを削ぐような構造になっているのだ。
「虎口には様々な種類があるけど大阪城の大手枡形門も虎口の一種で、別名桝形虎口とも言うのよ。他にも
先輩はそう言って不明門の喰違虎口を見て楽しそうに教えてくれる。
ただ曲がるだけの通路にもお城は意味をもたせているのだ。
何の意味もなさそうなただの通路、それがほんの少し構造上の意味を教えてもらうだけで様々お城の顔を知ることが出来る。
それがお城の本当の面白さなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます