百十三の城
秀長さんが秀吉の期待を一身に集めていた。
そのために与えられた領地は兄の本拠地を支える重要な拠点を与えられその中の一つが和歌山城だった。
「当時若山と言われたこの場所にお城を築くように命じた秀吉に従ってお城を建てた秀長だけど、その後お城の完成を見ずに大和を与えられ郡山城を本拠にしたわ。そのため和歌山城の現在の内郭部分は
南の丸の石垣は松の丸と言う中段部分に位置する通路と本丸御殿の石垣で多層的に見えてより和歌山城の石垣の美しさを強調している曲輪だ。
「和歌山城は関西の南に位置する場所だから、大都市の大阪に向かって通勤帰宅の往来が多い地域になるわ。
先輩は
「まあ近畿は現存天守を2つ抱えてる上に観光では有数の京都の二条城と大阪城を抱えてるからどうしても和歌山城はなかなかスポットライトが当たらんのよな。」
訪ちゃんも和歌山城の石垣を見て残念そうに首を横に振る。
「そうなのよね・・・」
先輩も訪ちゃんと同じように残念そうに首を横に振ったがその後に立ち直ったかのように胸の位置でぐっと両手を握ると
「だけど!だから私達は多くの観光客に悩まされること無くゆっくりと和歌山城の石垣を
と力強くそう言った。
確かにあまりにも観光客が多すぎるとゆっくりと石垣を眺めている暇もないだろう。
そう言う意味では和歌山城は人の数もゆったり感も丁度よいのだ。
「確かにそうやな、大阪城で遊んでたらたまに人が鬱陶しい時あるもんな。じゃあ和歌山城にはしばらく今くらいの立ち位置でいてもらおか。」
先輩の言葉に訪ちゃんはさっきまでの残念そうな顔と打って変わってあっけらかんとしていた。
「あまり観光客が少ないのも良くないのだけど・・・」
先輩は訪ちゃんのあっけらかんとした顔にちょっと複雑そうな顔をしていた。
南の丸を少し歩くと小さな動物園の入り口が目の前に現れる。
看板には和歌山城動物園と書かれていた。
「あっ!動物園あるで!」
訪ちゃんは動物園の看板を見た瞬間ぱっと明るい顔をした。
「ここの動物園、ものすごく古いらしくて、しかもずっと無料で経営してるらしいのよ。」
先輩が動物園を見つけて嬉しそうにしている訪ちゃんにそう教えてあげる。
訪ちゃんは無料と聞いて居ても立ってもいられず動物園の中に駆け込んでいた。
一方先輩はそんな訪ちゃんを母親が幼児を見守るような優しい目でその姿を追っていた。
「あの子、ほんと
先輩はそう言って訪ちゃんが入っていった動物園の入口を入っていく。
私もその先輩の後姿を追いかけた。
私達が動物園に入ると訪ちゃんはうさぎのコーナーでほっこりとした顔でうさぎを眺めていた。
「うさぎはかわええなあ・・・」
訪ちゃんの目の前にいるうさぎは体高が少し大きくて大人のうさぎだということだけはすぐに分かった。
うさぎが座っている場所の目の前には看板がかけられていてうさぎは寂しくても死なないよと書かれていた。
「訪ちゃん、うさぎは寂しくても死なないんだって。良かったね。」
「うん、やけど環境が様変わりすると胃腸の働きが停滞してしまうらしいで。」
訪ちゃんはうさぎを眺めてぽややーとしているのに侮れない知識を披露して私に反応した。
「えっ、それやばいじゃん!」
「そやで!せやから人の手でいっぱい餌を与え続けて構い続けなあかんねん。人が構わなくなったらペットうさぎは胃腸の働きが弱って死んでしまうのや。」
とうさぎから目を離さずに私にそう教えてくれた。
訪ちゃん・・・お城だけが好きなんだと思っていたのにうさぎにも詳しいなんて・・・
私が悔しい思いをしていると
「訪、地味にすごい知識ね。」
と先輩も訪ちゃんに関心して訪ちゃんの頭をポンポンとなでてあげる。
訪ちゃんは嬉しそうにしながらスマホを取り出して。
「こう言う便利な機械がありましてね。二人が来る前にぱぱっと調べたんや。」
そう言うと元気よくスマホの画面を私達の目の前にズイッと見せつけてきた。
「褒め損だわ!」
珍しく先輩は大きな声を出してそう言った。
スマホの画面を見てさっき訪ちゃんを褒めたことを後悔したみたいだった。
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