六十五の城
次の日、私は大阪城の
「ちょっと聞いてよ訪ちゃん!うちのお母さん絶対に変だよ!」
学校だと他の同級生に聞かれるかも知れないからいらいらを溜め込んでいたのでさすがの訪ちゃんもびっくりして引いていた。
「なっ・・・どっどうしたんや・・・」
私昨日の事を全部包み隠さず訪ちゃんに話す。
私が帰宅後に深い眠りに落ちたこと、お母さんが朝はデート用のおしゃれなワンピースででかけたのに帰宅後にはパンダの着ぐるみを着て父の夜食を作っていたこと、私が驚きのあまりに気絶した後部屋のベッドに寝かしつけてくれたまでは良かったけど起きたら部屋が全部パンダグッズで埋め尽くされていた事、うちのお母さんはあまりにも限度を知らないのだ。
お母さんは呑気で明るくて良いところもたくさんあるけど、嬉しくて楽しくなると浮かれすぎて行動が無茶苦茶になるのだ。
だから朝、沢山のクラスメートに無言で見つめられる悪夢で目を覚まして、起きてまた沢山のパンダの視線に見つめられていることに気づくと、再び意識が遠のいて危うく遅刻しかけてしまった。
その時も私は焦っていてお母さんに
『お土産はありがたいけど極端すぎるよ!』
って苦言を一言言うくらいしか出来なかったけど、お母さんはお土産に照れていると思ってニコニコと笑顔で私を送ってくれた。
しかも手にはパンダのハンドパペットを装着しての念の入れようだった
「あはは!さぐみんのおかんはおもろい人やなぁ・・・」
訪ちゃんは声を上げて笑った。
「笑っている場合じゃないよ!私このままだとパンダノイローゼになってしまうよ。」
私は頭を抱えて訴える。
「まあ、うちもおかんに同じことされたらあゆみ姉の家にしばらく家出するかも知れんな。」
訪ちゃんは私が切実な目で訴えると流石に真剣に悩んでくれた。
「でもあれやな、なんとなく似てるんちゃうか。さぐみんとさぐみんのおかん。」
私は訪ちゃんの言葉に軽くショックを受ける。
お母さんと私が似てるのは目元とか口元とかそう言うのにしてもらいたいものだ。
性格はお父さん似だと私は自分で思い込んでいるのだから・・・
私はあまりにもショックだったので身振り手振りで母とは違う事を訴えると訪ちゃんはうーんって頭をかしげながら腕を組んで
「感受性が高いところは似てるんとちゃうかなあ?思い込んだら全力なところとかも・・・あっ、あと天然なところとかもそうちゃうか?」
ズバズバと私とお母さんが似ている所を指摘する。
「そんなことないって!私は顔はお母さん似で性格はお父さん似なの!お父さんは出来る男だし!気が利いて優しいし、好きなお母さんの事を常に尊重するし、私の事も気遣ってくれるし、確かに休日はお母さんとデートばっかり行ってるけどそれは私が高校生になったからだからね。」
私は訪ちゃんの指摘にムキになると
「それ、お父さん事でさぐみんと似てる部分は全然言えてないんちゃうか・・・」
訪ちゃんは少し呆れる。
訪ちゃんに呆れた感じでそう言われると
「とにかく私はお父さん似だよ・・・」
と私は強引に決めつけつつも少し自信をなくして語尾は言葉が
そして私は元気をなくしてシュンとしてしまった。
私、お母さん似の性格なのかな・・・
「まっ似ててもええんちゃうんか。母娘やし、似てないほうがおかしいやん。おかんに似てると同時におとんに似てるところもあるんやからええんちゃうかな?うちらに気遣いできるところとか、興味あるものに真剣に向き合う姿勢とかはうちもさぐみんのおとんの事は知らんけど、きっとそんな所がさぐみんとおとんの似てるところやと思うで。」
そう言って訪ちゃんは私の事を励ましてくれた。
訪ちゃんがそうやって私を励ましてくれた事で多分私は元気になれたと思う。
「とにかく、せっかく今日は山里丸枡形まで来たんやから大阪城の隠し
そう言えば私は昨日訪ちゃんと大阪城の隠し曲輪に行こうと約束していた。
だから訪ちゃんは山里丸枡形に行こうと学校で言っていたのか。
訪ちゃんは私に気遣ってくれるし、優しいし、友達の私を尊重してくれるし、お城には熱心だし、なんか訪ちゃんのほうが私のお父さんに似ているよね・・・
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