五十九の城
お城を作った人達がいればお城を大切に守ろうとする人達がいる。
私は明石城の天守石垣のお陰でその事を知れた。
「石垣の劣化で一番多いのが石垣の内部の土が水分を吸って
「特に切り込み接ぎの石垣は
「孕み石・・・ですか?」
私が疑問に思いながら問い返すと
「孕み石は土が膨らんで石垣の石が内部の圧力で少しずつ押し出されて、その押し出された石垣が妊婦さんのお腹に似ているから言われているの。」
「妊婦さんに・・・」
私がつぶやくと
「結構膨らむみたいやねん。石垣にとっては天敵のようなもんやな。」
とお腹を撫でるふりをした。
「そっか、堅牢な石垣でも劣化はあるんだね。木造の建物でもケアをしないと
当たり前のようにあると思っていた石垣がちゃんとケアをしないといつか崩れていまう。
当たり前の事なのにその当たり前の事が頭の中に無かった。
形あるものはいつかは・・・
400年も近くも残ったものが少しずつ失われてしまうかも知れない。
私は少し物悲しい気持ちになってしまった。
「何ションボリしてるのよ。当たり前のことなのよ。でもそれを守ろうとする人達がいる。姫路城を知っている?姫路城があの美しい姿を保って世界遺産として世界中から愛されるのは姫路城を守る人達のお陰でもあるのよ。」
「形あるものはいつかは滅びると考えるとちょっと歴史の長いお城のことを簡単に見ていたなって。ずっとそこにあるのが当たり前なんだなって思っていました。だからそれを守る人達がいると思ってはいてもその存在が黒子のように薄い存在で殆ど見えてなかったんですよね。馬鹿だなあ。」
私はもっと楽しむだけじゃなくもっと理解することが必要だなあと改めて考えていた。
「気づけて良かったじゃん。在って当たり前、毎日それくらい近くにその存在がある人はそんなことにも気づいていなんだから。お城の石垣に落書きしたり、そう言うバカがこの世にはいるのよ。城下さんはその分立派だから。」
先生はそう言って笑ってくれた。
石垣に落書きって・・・どこの世紀末・・・?
流石にそんな人と比べられたくないよ・・・
普段はプライドがないのにそう言うしょうもないプライドだけは持っているのだ。
「さぐみんはほんま、感受性が深いな忘れたらあかんことやけど、まずは楽しむ事がお城を修復してる人にとっての喜びなんやと思うで。」
訪ちゃんは後頭部で手を組むと笑った。
訪ちゃんにそう言われると私もそのとおりだと納得させられる。
先輩も訪ちゃんの言葉に同意するように頷いた。
「そうね。まずは楽しみましょ。でも、お城にはお城を守ろうとする人達がいる。それを忘れないようにして楽しみましょう。」
先輩はそう言って微笑んでくれた。
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