五十八の城
「ん?なんやさぐみん、なんかあったんか?」
「あの・・・
私はさっきから算木積みのことが気になって仕方がなかったのだ。
すると訪ちゃんがハッとして
「ああ!なんかさぐみんが当たり前のようにお城のことに詳しいと思ってしまってた。」
驚いていた。
私がお城のことに詳しいと思ってしまっていたのはありがたい話だけど、私は昨日今日お城を知った女の子だって事は時々思い出して・・・
「私も城下さんと普通にお話していたから私の中でもお城を知っている人と言う感覚になっていたわ。ごめんなさいね。」
先輩はそう言って頭を下げると
「算木積みっていうのはこの天守台の
そう言って先輩は両手の指と指を互い違いに手をガッチリと組み合わせた。
「この手を見て気づかないかしら?」
先輩ガッチリ組んだ手を私の目の前に突き出した。
「この指を組んだ手ですか?」
そう言って私は先輩の手をまじまじと見る。
「私の手を見た後に角石を石垣を見て。」
私は先輩に言われるままに先輩の手を見た後に石垣の角石を見た。
石垣の石は見れば見るほど立派な石だった。
そしてなんか角石を下から上にゆっくりと見上げるとなんだか規則正しく並んでいるような気がした。
角石だけがだ。
「なんだか規則正しく並んでいるような・・・」
そう言って先輩の手を見ると私は『あっ』と小さく声を上げていた。
「そっか、長い角石を一段ずつ互い違いに組んでいるんだ。」
私がその事に気づくと
そして先輩に説明するように目で合図する。
「
そう言ってきれいな算木積みの角石を見つめた。
「石垣の石ってただ綺麗に積むために形を合わせて積み上げただけじゃなくって、しっかりと高く長く保てるように考えて作られているんですね。」
私はそうやって普通ならただの石積みの壁にしか見えないはずの石垣がひどく立派に見えてきた。
「お城の石垣は少なくとも400年以上は生きてきたんや。その間に崩落したりすることもあるけど、多くの石垣は長生きやわ。ただうちは不思議やねんけど、この城の天守石垣って微妙に色が違って新しく見える石があるけど、この算木積みの切り込み接ぎの石って後世の修復痕じゃないんか?」
そう言って石垣の新しい方の石をペチペチ叩いた。
「この算木積みの綺麗な石、私も石に詳しくは無いけど
先輩も石垣の角石に近づいて石の感触を確かめていた。
そうか、なんだか石が新しいような気がしていたけど修復した痕なら納得がいくかも知れない。
お城の石垣の技術も目立ちにくいけどどんどん進化していたんだ。
だから美しい石垣を維持できていたんだと思ったら、こうやって美しい石垣をいつまでも保ってくれる職人に感謝したいと思った。
「石垣もほおって置くといつかは崩れてしまうわ。そうならないように保とうとする人達がいる。私達
天護先生は授業中に生徒に向ける優しい笑顔で石垣眺めていた。
ほおって置くといつかは崩れる。
そして実際に崩れているお城はあるのだろう。
先生や先輩のようなお城を本当に好きな人にとってそんな事は絶対に起こってほしくないことなのだ。
先生の言葉は全てのお城好きに向けての言葉なのかも知れない。
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