五十四の城
その昔、
赤松さんが足利将軍を暗殺した理由は
一方
「山名宗全って凄い人なの?」
何も知らない私は質問するしか出来なかった。
「そやな、応仁の乱という事件を語る上でも欠かせん人物やし、
訪ちゃんは楽しげに私に教えてくれる。
「その応仁の乱の遠因が
比叡山ってあの有名な比叡山延暦寺だよね。
私はまだ行ったこと無いけどお母さんはお父さんとデートに行ったらしい。
『比叡山はしっとりとしていい場所だったわぁ。お父さんが凄く格好良く見えちゃった。』
とか言っちゃたりして・・・
なんで平気で大切な娘を一人置き去りにして毎週のように夫婦だけでデートに行けるのだろうか?
なんか考えると腹が立ってきた・・・
いや、そんな事よりも比叡山でそんな恐ろしいことが起きていたんだ・・・
「町を焼き払って飢えさせるってなんか・・・すごすぎません?逆らうものは許さないと言うのは性格上仕方ないとしても罪のない麓の街の人まで巻き込むなんて、正義を執行するにしても潔癖すぎて恐ろしいですよ。」
私は月並みに率直な感想を述べる
一方訪ちゃんは別の感想を持っているようだ。
「宗教勢力はなあ・・・比叡山の堕落はひどかったらしいから・・・でも比叡山焼き討ちって言ったら信長やけどその前には足利義教が攻撃してたんやな。」
「比叡山を徹底的に攻撃したのは信長のイメージがあるけど、その先例は足利義教だったのよ。その後、首謀者を謀殺した義教に怒った比叡山の沢山の門徒が抗議のために根本中堂を焼いて焼身自殺するの。あまりにも火の勢いが強かったのか比叡山の殆どのお寺が焼き払われてしまったわ。これを足利義教の比叡山焼き討ちというの。」
「でも足利義教は手を下してないんやろ?」
「でも実質義教が焼いたようなものだわ。それに麓は実際に焼き払っているのだし。義教はこの事件の結末を幕府の意見におもねる僧を天台座主という比叡山の一番偉い地位に着けたの。比叡山の降伏、制圧をやってのけた人は足利義教が初めてよ。ところで訪はもうひとり比叡山を焼き討ちした人物は知ってる?」
突然のクイズに訪ちゃんは
「えっ!」
と声を上げた。
どうやら答えを知らないらしい。
そもそも信長しか焼き討ちしてないと思っていたのだから当然の反応だ。
こう言うとき訪ちゃんは素直に
「うーん、知らん・・・」
とちょっとションボリしてしまう。
訪ちゃんの小さなサイドテールもシュンと萎んだ気がして可愛らしく思えた。
「室町幕府の
先輩はそう言ってニコっと笑った。
笑った笑顔は美人のそれだけど先輩、言葉が怖いよ・・・
「義教はこのくらいの事件は平気でやってのける力量を持っていたから幕府が抱えていた諸問題を次々に解決して義教が暗殺される頃には幕府の力は強大になっていたの。でも幕府は殆ど義教のワンマンになっていたわ。義教を将軍にしてくれた畠山満家も義教が将軍になってしばらくして病で亡くなっていたから体制が固まる前に義教が暗殺された結果、また元の状態に戻ってしまったの。」
先輩はちょっと眉をひそめると少し残念そうな顔をした。
先輩は歴史が大きく動く事件を話すとき少し感情が入っているような気がする。
本当に歴史が好きなのだ。
「そんな不穏な情勢の中でとんでもない事件が起きたの、
三種の神器ってあの天皇である事の証明物だよね。古事記とかの昔の歴史の本に出てきたやつ。
私はてっきり伝説上のものかとばかり思っていたけど本当に存在していたなんて。
私は歴史は全くの無知だが流石に日本人として恥ずかしいと感じてしまう。
「神璽って、
訪ちゃんの質問に先輩は
比叡山は焼き払われるし、三種の神器は奪われるし、赤松さんの件を引き金にいろんな事件が起こっていしまったけど、これどこで赤松さんは再興するの?
この流れで赤松さんが再興するならそれは日本史上最大のお家再興劇だよ。
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