五十三の城
先輩は少し不満そうだったけど訪ちゃんの言い分を理解したのか不機嫌な状態だけはなんとか治めてくれた。
さすがの先輩も人間なのかやっぱり好きすぎるものには夢中になりすぎて周りが見えなくなってしまうんだな。
人には弱点があるものだが先輩にもそう言うものがあったということを知れた事でより親近感が増したというものだった。
「じゃあ、仕方が無いから大きく
隠居した父親の跡をついだのに父親より早くに亡くなる現代でもあることだけど、お父さんとしてはとても悲しかっただろうなぁ・・・
私は何故か義持さんの気持ちになってしまう。
「義持は隠居だから政務は慣れたもので無事収まっていたんだけれど後継者が父親よりも先に亡くなってしまっていたから後継者問題に悩まされるのよ。そして義持は何故か後継者を決めずに
昔の武士は『後継者がいないなら俺がなってやろう』みたいな
地位が高い人だとは言えお坊さんに泣きついて最終手段を委ねるのは情けなくもあるけど戦国時代ほどの
「満済は後継者候補が三人いる事を満家に確認してじゃあ
「クジ?あの困った時の運頼みのくじ引きですか?将軍って当たりくじみたいなもので決まるんですか?」
私が驚くと先輩はうふふと笑って首を縦に振った。
「クジで決まった将軍に政務取らせるのは流石に嫌やなあ・・・」
と呆れ顔だ。
とは言え重要な歴史の一場面でこれが行われたのだから大変だなあ。
「普通はみんなクジって聞いたら驚いたり笑ったりするわ。私もあまり詳しくなかった時はそう思ったものよ。だけど今は手軽に簡単に行われる籤引きだけど、昔は神の意思にお
先輩は真面目な顔でそう教えてくれた。
神の意志にお伺いを立てる儀式・・・現代は便利だからなんでもあるから神様の意思も手軽になってしまったのかな?
とにかく満家さん達は真剣だったのだということは先輩の説明で伝わってはきた。
「その籤で決まった将軍が足利義教、第六代将軍よ。彼は
逆らうものは絶対に許さない・・・
それはとても怖い性格であり、一歩間違えば人を破滅させる。
義教さんはそんな弱点をもっていたのか・・・
「なんか信長にかぶるな。」
何気なく言った言葉に先輩は頷いた。
「そう、彼は信長よりも早く生まれた最も信長に近い性格を持った天才型の人間だったのよ。当時将軍家はとても権力が弱くなっていたのだけれど、室町幕府は
先輩は訪ちゃんにちょっと
「そうそう、うちが話が長いって言うから・・・ってなんでやねん!」
と訪ちゃんは先輩の話を聞くとノリツッコミをする。
「とにかく、多くの有力な家臣に領地をたくさん与えるということは主人の将軍家が小さくなるという逆転現象が起きるの。この逆転現象の解消こそが室町幕府の最大の命題だったのだけれど、足利幕府の最盛期を
悪将軍・・・自分は正義を執行しているつもりなのに、あまりにも強すぎて優しさを全く見せないから人はいつしか彼を悪の塊のように見ていたのだろうか・・・
「悪将軍か・・・なんか敵のボスキャラみたいな異名やな・・・」
訪ちゃんはゲームみたいな例えを持ち出す
「悪って言う言葉は現代だと悪魔とか悪化とか、そうネガティブな方向に考えてしまいがちだけど、昔は途方もなく強い人が悪と言われることが多かったの。例えば源頼朝の腹違いのお兄さんの源義平は悪源太義平って呼ばれていて、とても強い義平って言う意味を持っていたのよ。」
悪って言う言葉がポジティブに捉えられていた時代もあったのか、現代に生きる私にとってはとても不思議な感覚だった。
「この義教の場合はポジティブ、ネガティブどっちにも捉えられるくらいに将軍としての行いが
「暗殺!でも満祐さんは何もされてなかったんですよね?」
「そうよ、むしろ信頼もされていて関係は良好に近かった。でも人は
先輩は山名宗全さんの名前を出した瞬間、暴走してる時に似たようなちょっと興奮した時のような嬉しそうな顔を見せた。
もしかしたらすごい人物なのかも知れないな。
すると訪ちゃんも「おー!」と声を上げて
「山名宗全って
とキラキラと嬉しそうな顔になった。
こう言う話聞いていても、私は歴史に詳しくないから話を理解することからスタートだから羨ましいなって思わされた。
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