四十一の城
訪ちゃんと先輩に会わなければ私は引っ越してから多分大阪から外に行くことってあまりなかったと思うから本当に素晴らしい出会いになったなって心の底から実感していた。
「先輩、合宿楽しみにしていますから。」
私は訪ちゃんに困っている先輩を励ます意味を込めて笑顔を作ってそう言った。
「岡山や香川に行けるかどうかわからないけど
先輩は私が笑顔でそう言った事で少し安心したのかニコリと笑って返してくれた。
「ちなみに香川って
大阪から神戸に行く感覚って、今日はじめて大阪から明石に来たから良く分からないけど明石の途中の駅が神戸って言う駅があったから電車の乗り合わせによるだろうけど岡山からおおよそ小一時間位で行ける感覚なのかな?
それだともの凄く近いよね。
香川は四国の入り口っていう感覚で、瀬戸内海が横に走っているから簡単には行けないイメージが合ったけど、先輩に聞いたイメージを当てはめると意外に瀬戸内海は広くないのかもしれないと思った。
「凄く近そうな場所で安心しました。なんだか今すぐに行けそう。」
「流石に大阪から岡山が遠いから今すぐに行くことは出来ないけど・・・」
私の
「訪も松本城のことは忘れて楽しみにしていてね。」
先輩が訪ちゃんに振り向いてそう言うと、訪ちゃんはプイッとそっぽ向いてしまう。
「訪ちゃんどうしたの?」
私が訪ちゃんに聞くと
「うちは松本スト中や。ストライキが明けん限りあゆみ姉とは口利かんねん。」
と言うとまたプイッとそっぽ向いた。
虎口先輩は再びため息をついた。
「もう、そんな昭和の大事件みたいな事言ってないで、いい加減忘れなさいよ。去年のしかも合宿ことよ。」
確かに松本ストってそれっぽいな。
「明治でも大正でも昭和でも平成でも令和でも、うちは松本に行かれへんから松本ストするんや。」
そう言って返答した後に口を利いてしまった事にハッとして、またそっぽ向いた。
「もお!ほんとに馬鹿な子ね。先輩の引退記念合宿なんだから私に選択権があるわけがないでしょ。旅費だって引退するから特別に高い旅費を出してくれたんだから。でも私はその頃、本当は同じ現存天守でも松本城より高知城の方に行きたかったのよ。松本に行ける旅費があるのにどうして高知まで行かないんだろって心の中で思ってたくらいよ。」
訪ちゃんは先輩の言葉をそっぽ向きながらも聞き耳を立てていた。
お城好きがお城の話しされて聞かないはずもないだろう。
「なんで高知城にせんかったんや?」
訪ちゃんは先輩を横目で見ながら言った。
「あなた聞いてなかったの?先輩の”引退記念”の合宿なんだから先輩達が行きたいところに行くに決まってるでしょ。私には選択権なんて無いの。」
「じゃあ、松本城は行きたくなかったんか?」
訪ちゃんは今スト中だから相当無茶な事を言うな・・・行きたくないわけはないんじゃないかな?
でもここは上手く収めるつもりなら行きたくなかったって言うべきじゃないかな?
私は単純にそう思った。
だけど先輩のお城への思いが訪ちゃんへウソを付くことを許さなかった。
「行きたくないわけ無いでしょ!ええ、松本城はとても素晴らしいお城よ!黒の
すると訪ちゃんはそらみたことかと言わんばかりに
「ほらほら、やっぱり行きたかったんやんか!ずるいずるい!ずっこいわ!」
と
すると先輩は珍しく声を荒げて
「でも、私はそんな美しくて素晴らしい松本城よりも高知城に行きたかったのよ!だって新幹線と特急を使って行ったのよ。それなら高知にも行けるじゃない!だって高知城は日本で唯一無二の現存天守に現存の本丸御殿を構える日本唯一の本丸現存のお城なの!こんなお城日本中どこ探しても高知城しか無いのよ!これだけは全てにおいて完璧な姫路城でも高知城には絶対に敵わないの!」
と子供のように精一杯力説していた。
そして力説した後にハッと自分が声を荒げていたことに気づいて恥ずかしそうに周りを見回す。
ここは外でお城で憩いの場の公園でもある。
先輩はアワアワと珍しく慌てていた。
かわいい・・・
私は鼻血が出そうになるがなんとか抑え込んだ。
訪ちゃんは途中までブーブーとストライキをしていたが先輩が慌てている姿を見てストは辞めたみたいだった。
「ととと、とにかくもう終わったことは言わないで。あ、あの時は奇跡に奇跡が重なって松本城に行くことになったのよ。それだけは分かって。普通の合宿は近畿から少し出るくらいが精一杯の旅費なの。天護先生も旅費は近畿圏内ならある程度
先輩はよっぽど恥ずかしかったのか珍しく声をどもらせながらそう言った。
訪ちゃんは先輩が慌てている姿を見れて満足したのか
「しゃあないなぁ。今度みんなで計画立てて旅行しよ!」
と元気良く右手を上げた。
そんな訪ちゃんの姿を見て先輩は
「もう!いっつも調子良いんだから!」
またもや珍しく腕を組んで
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます