三十九の城
私が
「さぐみんは割と泣き虫の感動しいやな。」
と笑ってくれた。
先輩は私を
「ごめんなさい、城下さんがここまで感受性豊かに受け止めてくれるとは思ってもいなくって、迷惑かけたかも」
「そんな事無いんです。先輩たちの気持ちが嬉しくって、そう考えたら何故か気持ちが
私は先輩に気に病んでもらいたくなくて必死に弁解した。
「ありがとうね。時の記念日と城下さんの入部の記念を掛けてのただの思い付きだったのだから城下さんもそこまで重く受け止めないでね。」
先輩は鼻を真っ赤にした私に向かってニッコリと微笑んでくれた。
「重くなんて、私・・・そんな事考えてませんから・・・だから・・・今日は精一杯お城を楽しみたいです!」
私はなんだかよく分からないことを言ったような気がしていたがそれが私の精一杯いの先輩と訪ちゃんに対する伝えたい気持ちだった。
二人にはこの方が伝わると思ったのだ。
すると訪ちゃんはプハッと笑うと
「うちも精一杯楽しみに来たんやで。あゆみ姉もきっと同じや。」
そう言って訪ちゃんは親指をグッと立てると私の両手を引っ張って
「さあ今度こそ行くで!」
そう言って私をベンチから無理やり引き
先輩もそれに従って立ち上がるとスカートのポケットからハンカチを取り出して
「楽しみましょうね。」
先輩は私の涙の跡を優しく
感動して気持ちが昂ぶってしまったとは言え私はなんで我慢できなかったんだろうと今更私は凄く恥ずかしくなってきた。
私は先輩たちの言葉にただ頷くしか出来なかった。
私達は日時計の前にある入り組んだ階段を登ると大粒の石が高い石垣を形成していた。
「見て、城下さん、この石垣の石、大阪城と比べてなにか気づかないかしら?」
虎口先輩は石垣の石を指差してそう言った。
大阪城の石垣と比べるとそりゃ大きさとか、加工が
「大きさが全然違いますね。」
やっぱり当たり前だけど言いたくなってしまう。
「そうね。大阪城は徳川幕府にとって特別なお城だから特に石垣の石の大きさは目を見張るほどよね。でもあの石の大きさは本当に特別な城だからこそのもので大阪城以外のお城は大阪城の石垣ほどの石は使っていないわ。それ以外にもあるでしょ?」
先輩が求めていた答えとは違っていたようだ。
まあ普通に大阪城の石垣を見て他の城の石垣を見たらきっと大きな違いは大きさだと思ってしまうだろう。
それくらいに大きさが違うのだ。
だけど先輩はそれは当然としてその他にも違いがあるのだと言う。
それならば私が思い浮かぶのは一つしか無い。
「やっぱり加工の質ですかねぇ?」
すると先輩はうんと首を縦に振って頷いてくれた。
「そう、加工の質が違うの。明石城は全てではないけどその
そして石垣の石の角を手で触った。
「ここを見て、角が
ハンマーで叩いて石を加工した。
こう言う石の形も加工の技術が進歩したから大阪城は綺麗な角のしっかりとした石になったのだなあと私はカンカンとハンマーで石を叩く石工を想像した。
「この明石城みたいな石の他に大阪城みたいに綺麗に切り出した石を切込み接ぎと言って、切り込み接ぎや打ち込み接ぎみたいに加工を全くせず自然石を高く積んだ石垣を
切り込み接ぎと打ち込み接ぎと野面積み、石垣にも沢山種類があるんだ。
私は石垣の縁を触って石の感触を確かめてみた。
「野面積みは戦国時代の城郭によく使われていて、当時は穴太衆と言う野面積み専門の石工集団なんかもいて初期の近世城郭の石積みの代表的なそんざいになったわ。ただ野面積みは自然石を利用するから石の形も不揃いだし、大きさも不揃いだわ。それだと高く積むことも出来ないわ。だから中期頃の近世城郭にはハンマーで叩いて加工して打ち込み接ぎの石を使ってお城を作るようになったの。」
先輩がそこまで言うと訪ちゃんが
「野面積みには弱点があって高く積めないのと同時にロッククライミングが得意な兵士は登れてしまうっていう弱点もあったんや。だから石垣に取り付いて城を撹乱されたりスパイが潜入したりすることを
石垣石の変遷はシンプルだけど沢山の事情を秘めていたのか。
お城に触れるっていうことは石にも詳しくならないといけないのか・・・
初めてあった時の訪ちゃんに石マニアのレッテルを貼ってごめんなさいと心の中で私は謝った。
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