第18話 裏切り者探し

「師匠!」


 目が覚めたら、目の前にオッドアイの綺麗な顔があった。


「カミラ。なぜ、ここにいる?」


「学長に聞いたら、ここにいると聞いたので、稽古をつけてもらおうかと思って!」


「だからと言って、連絡もなしに人の部屋に入るやつがあるか。どうやって入った?」


「空いてましたよ?」


 カミラの指す方を見る。ボロボロで、ところどころ光の漏れる扉があった。


「………そうだった」


 昨日から学長からタダで貸してもらった家なのだが、案内されたところは、過不足なくその家賃に見合った家だった。

 野宿していた身としては、ベットがあるだけありがたいものである。


 今日は休み。もうすぐ学長に参加を命じられた大会があるのだが、今日は自分のことのために時間を使おうと決めていた。


「どけ。今日は忙しい。」


「人探しですか?」


「あぁ」


 ささっと準備をして外に出る。しばらく無言で歩いた後、何かに気づいた様子のカミラが声をかけてきた。


「もしかして、行くあてもなく彷徨ってるだけですか?」


 そんなわけではないし、ただこいつを巻こうとしているだけなのだが、そう言うことにしておこう。


 とりあえず聞き込みから、始めようと言うところだ。

 目標がはっきりしているギルドをまずは潰したいが、流石に今の僕では手に余る。

 そこで、ジョナサンを先に見つける。


 まずきたのは、ジョナサンと出会った酒場だ。そこで客に聞き込みをする。


「おおぉ!! ダークホースのトーラじゃねえか!! うちに入らないか!?」「ギルド追放されたんだってな!? うちならもっといい給料出すぜ!」


 全員に聞いて回っているうちに、僕の勧誘大会になってしまったので諦めて店を出た。




「師匠、ジョナサンなら、私、魔眼で探せますよ?」

「は?」


 今なんて?


「だから、人って結構魔力に個性があってですね〜しかも常に魔力を発散してるので、歩いた道とかわかるんですよ」


 まじかこいつ? 別に魔眼の能力に驚いているわけではない。


「なんでジョナサンが去った時にそれを言わなかった? おい? 目を逸らすな」

「だ、だって!! そうでもしないと師匠になってくれなかったじゃないですかっ!!」


 こいつも嫌いだ。直情的なアホの子だと思っていたのに、そういう狡賢いことを考えられるなんて。

 魔眼は助かるけど、用が済んだらかかわらないようにしよう。


「師匠になった覚えはないし、これからもなるつもりはない。ジョナサンの居場所を教えろ」

「えぇ!! 師匠冷たい! 怒ってるんですか!? 怒ってるんですか!? 昨晩はあんなことやこんなことまでしたのに! 賢者タイムですかコノヤロー!」


 一発殴ってジョナサン探索を再開した。僕は魔法使いだから、力はないが精神的にダメージは与えられたはず。


 意外にも、ジョナサンの痕跡はすぐに見つかった。どうやらまだこの街から離れていないらしい。絶対にバレない自信があるのか、それともアホなだけなのか、それとも離れられない理由があるのか。

 はっきりとはしないが、先ほど行った酒場でもジョナサンの痕跡はあったらしい。


 だったらその時に言えよ。ずっとジョナサンのこと聞き回ってただろうが。と少々腹が立った。


 機嫌を損ねると「見失っちゃった〜」とか言って無駄に遠回りしようとするので、口に出しては言わないが。時間の無駄だ。


 そしてしばらくして。


「トロウキヨ学院じゃないか。あいつは冒険者だぞ」

「でも、確かにここにきた形跡はありますよ? しかも割と頻繁に」


 痕跡を辿っているのか、フラーっと中に入っていく。

 カミラは確実として……今日は休日だから、僕も部外者扱いなんだけど。




「不法侵入がいかんぞ不法侵入は」

「がくちょーー!! そこをなんとかぁ!!」

「すいません……」


 なんで僕まで謝らないといけないんだ。勝手に入ったのはカミラなのに。


 校門から十歩進んだところで、学長に気づかれサクッと捕まえられた。気づいたら学長室にいたレベルで、何が起こったかわからない。


 カミラはいいじゃないですかぁ! とわがまま言うばかりで、話がややこしくなりそうだったので、僕からある人間を探している旨を説明した。


「人探し? ほえー珍しいの? 魔眼が使えるのかお前さん」


 昔、と言っても数千年以上前だが、魔眼は存在していたらしい。魔導具の発達でどんどん廃れ、今は絶滅したと考えられている。


「うーん、そんな男はこの学院で見たことないがのー」

「また騙したのか。カミラ」

「ちっ! ちがうよぉ! 違いますよぉ!!」


 若干声が上ずって、照れ照れしている。可愛げないからやめろ。


「まぁ、授業が終わるまでしばらく待つといい。特別に学校を回ることを許可する。ほれ、ちゃんとこれつけておくんじゃぞ」


 臨時許可書を受け取り、肩につけてしばらくたった。

 チャイムが鳴り、ドアの外からドドドドっと駆け足が聞こえ、


 バンっ!!


「学長! って、あれ!? 師匠!? と誰!?」


 顔を出したのはリン。先に反応したのはカミラ。


「師匠!? 師匠、私が一番弟子じゃなかったんですか!?」

「お前の師匠にはならん」

「って、えええええええええええ!!!! 師匠! なぜかこの女からジョナサンと同じ魔力が漂ってますよ!!」

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