第9話 新聞のタイトル
ソレイドの放った斬撃は、僕たちには掠りもしなかった。
代わりに、僕とジョナサンが並ぶ舞台のすぐ横の足元に、深々と削られた斬撃の跡があるのみだ。
「……なぜ」
「おい……なんか今……剣聖の斬撃がアイツらを避けなかったか……?」「俺も……そう見えた……でも無理だろ! 放たれたらもう制御不能なんだし……流石の剣聖でもそんな技使えねえって」「じゃ、じゃあ今のどう説明すんだよ?!」
「おい……生きてるぞ……?」
「えぇ、間一髪間に合いました」
正直危なかった……あとちょっと魔力の出力が足りなかったら、斬撃を完全に逸らすことなんてできなかった。
僕がやったこと、それは魔力場を作ることだ。
ソレイドの斬撃も、魔力を剣にこめて、降ると同時に爆発的に解放させる一種の魔法だ。
魔力場は魔力媒体のもの全てに効果を及ぼす。
ソレイドの斬撃が右から左にそれたのも、この同じ理屈だ。
評価SSのソレイドの奥義に、量産型の剣が耐えられるわけもなく、ボロボロと崩れ落ちた。
ルール上、一試合につき剣は一本。つまりソレイドはもう丸腰だ。
「ジョナサンさん!」
「お、おう! なんか知らんが、もらったぜ!」
突っ込むジョナサンだが、相手は腐ってもSS、そして世界でも上位を争う冒険者だ。
素手でも当然ながらSランクと同程度の戦闘力は持っている。
「くっ、ザコ如きが粋がるな! 剣がないからといって、無名の雑魚に負けるようなソレイド様ではないわ!」
ならば、どうする?
戦闘力を手の届くところまで、下げてやればいいだけの話。
「相手はゴブリンです! いつも通り落ち着いて相手の攻撃を見てください!」
「誰がゴブリンだあああ!!」
突っ込んできたタイミングで、氷結魔法、そして風魔法を発動、さらに振りかぶった腕の進路に防御魔法を発動させる。
ジョナサンはそれを避ける。
「ばかな……なぜ当たらん!」
そこからは、ただの丸腰と武器持ちの勝負となった。
結果は、ジョナサンの決めた一撃が急所に当たり、ソレイド退場。
それからもう一人のやつだが、前衛のいなくなった魔法使いなど、話にもならなかった。
『評価SS「剣聖ソレイド・アレクサー」の初戦敗退』
号外の見出し。
そして、副題には、
『圧巻のダークホース「ジョナサン・ドッチ」無名冒険者が評価SSを圧倒』
と書かれていた。
控室に戻った僕たちは、それを見ながら、別のことでさらに驚いていた。
「……おい」
「全員………棄権?!」
最初の試合は本戦トーナメントに出る前の予選扱いで、いくつかのブロックに分かれて試合を行うのだが、僕らのブロックの他の参加者が全員赤いバッテンで塗られていたのだ。
赤いバッテン……それは『棄権』を意味する。
僕たち以外全部赤だ……嘘でしょ?!
「てことは、俺たち本戦出場決定……てことだよな?」
「ですね……信じられない……」
本戦は今日から一週間後。
マッドベアで得た報酬でなんとかやりくりし、空いた時間でジョナサンとの連携や、作戦会議、相手が魔法を使ってきた際の対処法などについて入念に話た。
本戦当日。
大きなゴングとともに、僕たちはステージへと上がった。
「さあああ! 初戦で世界最高峰のギルド『聖剣の柄』のSSランクである剣聖ソレイド・アレクサー相手に、無傷で快勝した、名もなき怪物!! 盤面をひっくり返す、黒の大嵐が今ここに!! 本戦第一回戦は、今大会最注目のこの二人だああ!! 「ジョナサン・ドッチ/トーラ・フロスト」の入場です!」
「き……緊張するな……」
「大丈夫です、平常心です。この一週間しっかり準備してきたじゃないですか。勝って必ず賞金をゲットしましょう」
「対するはああ!! 予選全戦全勝! 圧倒的なパワーで全てをねじ伏せた、生きる伝説こと……破壊神「オッド・スライ」だああ!! 評価SSでありながら、その破壊力は他のSSの追随を許さない! 破壊神VSダークホース!! 勝つのはどっちだああ!!」
遅れてやってきたオッドと、並んで向かい合う形になる。
「まさか、こんなところでまた会うとは。トーラどの」
「そうですね」
オッドは、ジョナサンに視線を向けた。
「そこの御仁。ジョナサン・ドッチと言ったでござるか?」
「お……おう。」
「良い試合にしようではないか」
「お……おう!」
返事を返したジョナサン。司会が声をかけ、そして、別れて位置につく。
しばらく静寂に包まれたあと、戦いのゴングが鳴らされた。
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