第13話 3人の通学と体育祭練習

1週間後の木曜日、5月に入った。今日はあいちゃんが学校に行く。当たり前だが、あいちゃんだけは私服で良い。


今の時刻は朝5時、少し遅めだが今日はこの時間に起きた。さぁ朝メシ朝メシって思って部屋を出ると、愛央が待っていた。あー、作ってほしいんだなと思い、今までは飯を作った後にツインテールを作っていたが、今日は飯の前にツインテールを作ってあげた。リボンは気分を変えてピンク色にしてあげた。愛央は普通に見た目から可愛いが、ツインテールやハーフアップを作るとさらに可愛くなるのだ。


6時20分、あいちゃんが自分でまた起きてきた。

あいちゃん、自分で起きられるようになって偉いなって俺らは思ってる。


あお「たっくん!食べよう!」


愛央の勧めで早めの朝飯。当然俺の手作りだ。食べ終わると食洗機で皿を洗う。その間愛央の応援を見るのだ。


あお「フレー!フレー!たーっくーん!フレ!フレ!たっくん!フレ!フレ!たっくん!」

たく「さすが愛央。上手いなぁ」

あお「ふふっ。次は、あいちゃん応援するよ!」

あい「やったぁ!」

あお「フレ!フレ!あいちゃん!GO!GO!LET'S GO!Fooooo〜!!!」


チアリーダーって相当声出すらしい。まさにうちの愛央も同じだった。応援し終わった愛央はすぐ制服に着替え、あいちゃんをだっこして遊ぶ。そう、あいちゃんは愛央のだっこが好きなのだ。


荷物は3人分、筆箱2つとあいちゃんの飲み物、小さめのタオル、愛央のチアノート、俺のバスの形式記入ノート。案外少なめの荷物である。今月は4時間で終わるので、お財布は俺のだけ持っていこう。バイトをやっている関係で、愛央よりお金は多く持っている。チア部の愛央はあいちゃんをだっこして通学するのだ。家から学校までは15分くらい。バス停で言うと2つなので、歩いて通学できる距離だ。


俺らの夏服は昨日届いた。方南の女子って、夏服のスカートの方が種類多いんだなぁ。その種類数12である。めちゃくちゃ多い。私服レベルに可愛いものから、高校生っぽいプリーツまで。男子はシンプルすぎるものだが、愛央たち女子は自由に選べるんだと知った。ワイドパンツスタイルもありらしい。ただし正装は全員共通でプリーツスカートを着用するらしい。


リボンをつけ、ニットベストを着た愛央は赤いチェックスカートで出てきた。帰りにどこか行きたいのだろう。俺は緊張していたが、いつものように愛央が手を握り、一緒に出た。


今日は体育祭の個人競技の練習。応援団の太鼓やホイッスル、ポンポンの音が響く中、最初の200m競走に出る俺の所へ、愛央がポンポンを持ったまま話しかけてきた。


あお「フレっフレったっくん!がんばれがんばれ徒競走!わ〜!」


そう、体育祭だろうと容赦なく愛央は応援する。愛央らしさ抜群の赤いベストにひらひら揺れる白いチュールスカート。そしてツインテールと赤色のホイッスル。さらに特注の金、赤グリッタ、青メタリックのポンポン。俺はその応援を心に留めて、徒競走の順番が来るのを待っていた。


12番目、E組最後の走者は俺。紅組から大きい太鼓の音や鳴り響くホイッスルの音が聞こえる。俺は特別行事ってのが大がつくほど嫌いだが、愛央の応援が一日中見れる体育祭だけは別だった。乾いたピストルの音が鳴り、俺を含む6人は一斉に走った。愛央はトラックの内側でホイッスルを吹きながら、さっきとは違う応援団用のポンポンを振っていた。


徒競走は12レースあるので12レースが終わった後は自席に戻ることになっている。が、うちの愛央は兄想いということもあり、ゴール直後速攻で俺の所へきた。


あお「たっくん!お疲れさまっ!すごかったよ!」

たく「ありがと。愛央のおかげだよ」


そんな会話をして、俺らはハグをした。当たり前だが、俺は既に男子全員を敵に回している。こんな美女にぎゅー出来るのは双子ならではだからだ。


さて、2時間目は男子全員による綱引きだ。

愛央達女子は全員で一所懸命に作ったポンポンを持ち、愛央のホイッスルの合図で応援をしていた。

E組VSB組。16人VS17人の対決だ。


あお「ピピーッ!E組応援、いくよー!」

全員「おー!」

あお「せーのっ!」

全員「フレ!フレ!男子!フレ!フレ!E組!」

あお「ピピーッ!いい感じだよ!もう1回!せーのっ!」

全員「フレ!フレ!E組!フレ!フレ!E組!」

あお「ピッ!レッツゴーコール!せーのっ!」

全員「ゴーゴーレッツゴー!E組レッツゴー!ゴーゴーレッツゴー!E組レッツゴー!ふぁいとー、おー!」

あお「ピピーッ!みんな、1回応援やめて!説明聞くよ!」


愛央達の声援が俺たち男子を励ますが、あんな応援、テキトーにやってるって兄の俺から言わせればバレバレ。でも愛央は過去にこう言っていた。


あお「ホイッスルを吹きながら応援するのってなんか恥ずかしい。だいたい愛央が応援したいのはお兄ちゃんのたっくんだけだもん!男子たちはまともにやらないし。あ、たっくんは別だよ!」

たく「なるほどなぁ、じゃあ俺らが綱引きやる時、愛央がリーダーでホイッスル鳴らすと思うけど、そんときの応援は、テキトーにやるの?」

あお「うん!たっくんだったら本気で可愛く明るく元気に応援するけど、男子たちはテキトーでいいや!」


でも愛央の美貌だとあんなテキトーな応援でもうちのクラスの男子たちは惚れるのだ。全くバカバカしいもんだ。


さて本題の綱引き。先生のホイッスルの音でスタートする。負けたらガチギレ確定の俺は、絶対に負けたくない。


先生「用意、ピーッ!!!!」


ホイッスルと同時に一斉に引き始める。愛央は一所懸命に「たっくん!ファイトー!男子負けるなー!」って応援しているが、実は俺の時だけガチで、男子たちにはテキトーである。

そして俺らは逆に引っ張られている。ヤバい、このままじゃ負ける。


「ピッ!ピッ!ピーッ!!!」


B組の勝ち。たった1回の勝負だが、とてもショックだった。そしてゆっくりと自席に戻った俺を、愛央は待っていた。もちろん、愛央のポンポンは持ち替えて。


あお「たっくん、お疲れさまっ」

たく「負けちゃった・・・」

あお「だいじょうぶっ♪今日は練習だから!」

たく「はぁ・・・」

あお「元気出してっ♡フレ!フレ!たっくん♡」


男子たちは俺らの方を向いて羨ましがっていたが、愛央は真剣に、かつ可愛く励ます。双子の妹で兄好きな愛央は、兄の俺を放っておけないのだろう。


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