第12話 琴乃匠の本気

翌日。愛央はいつものようにポンポンを振り始めた。マルーン色と金のグリッタ、2色のミックスポンポンである。昨日の愛央からの相談を受けた直後ということもあり、日曜日ながら愛央はチュールスカートを着なかった。でも愛央はボトムがスカートのみ。かれこれ30着は持っている。今日のコーデはブラックのプリーツスカートと、チア風の長袖トレーナー。まだ4月だから、寒いのだろう。

愛央はいつものようにポンポンを振り終えると、

俺に甘える時間を作る。


あお「たっきゅーん♡あのね!愛央が応援する服で、好きなの選んで欲しいの!」

たく「は、俺が選ぶ?」

あお「これと、これと、これ!どれがいいかなぁ?」

たく「また難題かぁ・・・」

あい「きゅーぴ」

あお「あいちゃん!」

たく「どしたの。めずらちぃね」

あい「あいたん、これがいい!」

たく「あいちゃんが選ぶって、めったにないよね」

あお「うん!じゃああいちゃんの好きな物にするね!あいちゃん、ありがとう♡」

あい「あい!きゅぴ〜!」


愛央は俺に選んで欲しかっただろう。でもあいちゃんが選んでしまった。そもそもそのこと自体が珍しかった。俺らはあいちゃんが選んだ標準スタイルをそのまま採用した。しかもあいちゃんも着たいらしく、愛央とあいちゃんの双子コーデが出来上がったのだ。


2週間後の木曜日、朝の7時にそれは届いた。愛央はすかさず開けようとしたが、学校に行かなきゃいけない俺らはひとまず部屋に置いておいた。


私立方南の1年E組に今日から来る子がいると聞いた俺と愛央。どんな子なのか楽しみにしていたが、なんとその俺らの期待は裏切られるのだ。


先生「今日はみんなの仲間になる子を紹介します」


あい「きゅぴー!」

たく「はぁ!?」

他生「えっ、高校に赤ちゃん!?」

あお「あの子って」


「あいちゃん!?」


電撃のニュースだ。そう、うちの琴乃愛華ことのあいか、あいちゃんが俺らの高校に通うことになった。とはいえ、週1登校のあいちゃんに愛央は大喜び、みんなは戸惑い。俺どうしろって言うんだよ!!!って思いながらも、先生に呼ばれたので、教卓へ。


先生「確か、琴乃愛華ことのあいかちゃんだよね?

琴乃匠ことのたくみ君と琴乃愛央ことのあおちゃんの妹って聞いてるけど」

たく「ごめんねみんな。驚かせて。改めまして、

この子が琴乃愛華ことのあいか。あいちゃんって呼んであげてね。あの、僕と愛央の妹です。俺もよくわかってないんだけど、多分週1で通うのかな?甘えん坊でよく泣いて、色々迷惑かけるかもしれないけど、よろしく頼む」

JK1「あいちゃん可愛い〜!」

JK2「それな!愛央と匠羨まし〜」


お前らマジかよとは思ったが、どうもうちの父親が仕組んだらしい。勝手に何してくれんだよとは思ったが、授業中は大人しく、俺らの勉強の邪魔はしてこない。強いて言うなら、お昼に甘えすぎて泣いちゃうところだけがあるが、愛央の応援と俺の世話があるからいい子でいられるのだろう。


放課後即座に俺は父親に電話した。


たく「あにしてくれんの!?」

昭仁あきひと「いやね、あいちゃんがぐずると匠が居なきゃ俺らでも泣き止まないからさぁ、だからお前らのところに週1で通わせることにした」

たく「保育園ちけぇべ!?俺らのところわざわざ入れる必要あるかよ!」

昭仁「ねぇけどあの子の将来を作るのはお前らだから、我慢してくれ」

たく「ったくしたがねぇなぁ。月の俺と愛央の小遣い万札1枚で許したるわ」

昭仁「お、おう・・・分かった」


っしゃあ契約成立ゥ!って感じで家に帰ってきた俺ら3人はそのまま朝の7時に来た愛央のチアコーデを見た。愛央は恥ずかしがったが、やはり可愛かった。赤のノースリーブベストに、赤をベースとして青、白、黄色のストライプ5本をあしらったプリーツスカート。そんな愛央はこれからも可愛さ抜群のチアリーダーとして俺を応援するはずだ。


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