第10話 双子で奏でるチアとピアノ
俺らは特待生として入学したが、その理由を話していなかった。俺らは勉学はまずまずだが、ピアノがとにかく得意だった。愛央はチアとピアノの才能があり、私立方南で特待を受けられた。
そして今日はその音楽の授業がある。
愛央はいつものブレザーに身を包んだあと、スカートをどちらにするか迷っていた。
あお「たっくーん、どうしよう」
たく「あじした?」
あお「今日、音楽の授業あるでしょ?」
たく「そだなぁ、それがあじした?」
あお「可愛い制服で行きたいんだけど、うちの高校、スカートが3種類あるでしょ?それで迷っているの」
たく「なるほどね。愛央的にはどっちで迷ってる?」
あお「フレアとチュール。チュールの方が可愛いかな?」
たく「たまにはフレアで行ってみたら?可愛いと思うよ」
あお「うん!ありがとっ!」
愛央の可愛らしい姿を横目に、俺はパソコンを開く。スペックはかなり高め。動画編集が余裕でできるくらいの性能だ。正直俺は編集以外基本的にパソコンは開かないタイプなので適当に調べ物をして、スリープさせてしまった。
7時30分、愛央のチア練習が始まる。いつものやつだ。だけど今日はフレアスカートにブレザーという、女子力高め?のコーデに身をまとった愛央がチアの練習をすると、俺はちょっぴり驚いたのだ。
あお「たっくん、絶対成功させてっ♪」
俺は何を言っているのか分からなかったが少し考えて納得したのだ。音楽の授業では必ずピアノを弾ける人が前に出て発表する。愛央と俺はそれをやることになっていて、そのための応援だったのだ。
愛央はいつも学校指定の赤いポンポンを教室の隅に置いている。まさかこの後、愛央がこれを持っていくことを俺はこの時まだ知らなかった。
先生「おはようございます。今日は芸術の授業があるので早めに移動してください。ホームルームおわり!」
たく「早っ。ってか愛央、芸術って何限?」
あお「1限って書いてあるよ」
たく「は!?すぐじゃん!!!」
あお「とりあえずたっくん荷物持って!愛央、ポンポン持っていくから!」
たく「え!それありかよ!?」
あお「愛央の特権♡」
たく「はぁ・・・したがねぇ」
あお「ごめんね、愛央はたっくんと行くの。また今度ね!」
小松「うん!」
たく「愛央、大丈夫?俺に執着しなくてもいいんのよ?」
あお「たっくんから・・・離れたくない!」
愛央は俺に泣きついた。そのくらい、俺のことが好きなのかと理解し、俺はハグをしてあげた。
愛央は昔から俺の事を想って生活してきた。友達は確かに俺ら双子は少なかったが、双子の妹愛央が大切にしたいっていう気持ちがあり、ここまで成り立ったのだと思う。
音楽の授業が始まった。
先生「音楽を担当しています。僕が
みんなが自己紹介を終え、残ったのは俺ら双子だけ。俺から自己紹介をすることにした。
たく「琴乃匠です。横にいるのが双子の妹、琴乃愛央です。僕は音鉄です。僕らは双子で、ピアノが得意です。よろしくお願い致します」
あお「琴乃愛央です!お兄ちゃんのたっくんの事を応援するチアリーダーです!ピアノが得意なので、色々な曲を弾きたいと思っています!よろしくお願いします!」
拍手が止まらない。そう、愛央は緊張を紛らわすために片手に赤いポンポンを持って、もう片手は俺の手を握っていた。だから愛央は、俺から離れられないのだ。
愛央の美貌に惚れた伊登先生と男子10人がまた告白してきたが、当然却下。愛央は実を言うと人見知り。だから大人しい分、俺を応援したい!って思うのだろう。
芸術の授業は2時間連続。2限はピアノの発表会だった。俺らが1番最初。愛央はポンポンを持って、俺の背中に隠れた。
たく「あに、あじしたのよ」
あお「愛央やっぱり緊張する〜!」
たく「よしよしいい子いい子。行くよ」
あお「ふれ、ふれ、あーお。ふれ、ふれ、たっくん」
たく「そんな緊張しなくていいからね。いくよ」
某音ゲーをプレイしていた俺は今日その曲を弾き始めた。愛央はピアノの音に合わせ、ポンポンを振って踊り始めた。
1番だけ弾き終わった俺は愛央の方を向いた。
愛央は恥ずかしくて泣いちゃっている。先生は困惑しているようだったが、俺は愛央にこう言った。
たく「愛央、がんばったね」
あお「ありがとう・・・やっぱり怖い」
たく「ぎゅーってしてあげるから」
こう言って席に戻った。その日の残りの授業も今日はひたすら愛央がぎゅーして欲しかったらしい。
休み時間は40人の目の前で10分間ハグである。
男子からしたら俺は敵なのであろう。
あいちゃんにこのことを話したら大喜びしていた。
あい「ねーねーぎゅー!」
あお「あいちゃ〜ん♡」
愛央とあいちゃんはぎゅーしている時が1番可愛いのだ。そんな愛央達を俺はちゃんと世話してあげられるのか?
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