第5話 仮入部と愛央
ようやく午前中の授業が終わり、愛央が部活紹介のチラシを見て俺に話してきた。
あお「この学校、部活が15もあるんだね。たっくんは何入りたいの?」
たく「俺鉄道研究部かな。愛央は?」
あお「チア入ろうとしてた」
たく「まぁじっすか?」
あお「うん!それで今日チア部の仮入部があるの。帰るの少し遅くなるけど、たっくん来てくれる?」
たく「あいちゃん、あじする?泣いちゃうかねぇ?」
あお「あいちゃんは、愛央のポンポンでなんとかする!」
たく「それならいっか。行ってから帰ろ」
こんな感じで帰る時間が少し遅くなることを承知の上で、愛央のチア部仮入部が始まろうとしていた。
私立方南の授業は遅くとも14時50分に終わる。なぜならここは、平日の授業が全て5限で授業が終わるからだ。しかも他の私立高校にありがちな土曜授業は一切ない。あったとしても、その次の月曜日は休みなのだ。
仮入部で体育館に行った俺と愛央は早速説明を聞いた。
顧問「チア部顧問の
俺は愛央に「行ってこい」とだけ言って、待っていた。そらそうだ。男子がチアとか言語道断。でも俺は付き添いで来たから待つしかないのだ。
5分後、着替えてきた愛央の姿はめちゃくちゃ変わっていた。赤のノースリーブベストに白のプリーツスカート。そして手にはいつものあの金色のポンポンを持っていた。そして、愛央は俺に話した。
あお「どうかな、似合う?」
たく「あのめちゃくちゃ可愛いんですけど」
あお「ふふっ、この高校のチア部の服可愛いね!」
たく「それを愛央が着るとこうなると。はーおいねぇ見てられん」
またまた方言が出てしまった。訳すと、もう無理見てられないってことになる。そのくらい、愛央は可愛かったのだ。
ポンポンを持っていっぱい練習した愛央はそのままの姿で下校した。この学校、部活着で下校許してんのかよと驚いたが、愛央はなんと歩きながらチアを「まだ」やっていた。
あお「ごめんね、たっくん。荷物持ってもらって」
たく「いいよ。ってか俺と愛央の荷物共通だべ。別に大丈夫だよ」
あお「ありがと。やっぱり、チア部のユニ可愛いね♪愛央、ほんとに入ってたっくんの応援やろうかな〜」
衝撃発言。こんな姿で応援するとか言い出した愛央に俺は黙ってしまった。その後愛央はポンポンを片手に持ってこう言った。
あお「私はたっくんの背中を見て育ってきたの。たっくんがいたから、愛央が明るくなれたの。だから愛央は、たっくんのこと全力で応援したい!」
愛央がこんなことを言ったおかげで俺はこう言ってしまった。
たく「愛央がそうやって言うなら、俺も頑張る。一緒に、部活も頑張ろな」
あお「うん!」
愛央は喜んで返事をした。そんな会話をしているうちに、保育園に着いた。
たく「せんせーい、どうもです」
先生「おかえりなさい。あいちゃん呼んでくるね」
たく「おなしゃす」
あい「あい!ねーねーかわいい!」
先生「あら、ほんとね!方南チア部に入ったの?」
あお「いえ、今日は仮入部だったので!」
先生「そうなの!頑張ってね!」
あお「ありがとうございます!フレ!フレ!あいちゃん!フレ!フレ!たっくん!」
たく「すいませんうちの愛央が。んじゃ明日もあいちゃんをお願いします。僕ら、帰りますね」
あい「てんてーさよーならー!」
驚愕だよ。保育園でチアやるとは。でも愛央は満足してるし、いっかな。家に帰ってきた俺ら3人はすぐさま自室に入り、何部に入るか考えていた。俺らの部屋は10畳、机が2つ横並びで置いてあり、左の机の横に愛央のポンポンが置いてある。12色24個あって、全て大きい40cmサイズ。そのうちふたつを選んで、愛央は毎朝応援している。俺の机は右側で、かなり広めの机とパソコン、タブレットを置いている。愛央の机は左側。一般的な女の子の机って感じだ。寝具は愛央がベッド、俺が敷布団だ。これにはこだわりがあり、俺が敷布団じゃないと嫌だから。ところで、あいちゃんの寝床はどこかというと、実は愛央と俺の寝具、どちらかで寝ている。セミダブルサイズのベッドかセミダブルサイズの布団どっちかをあいちゃんは選んでいる。甘えん坊のあいちゃんは夜ごはんを早めに食べて寝かせる。そうでもしないと、良い子に育たないからね。
夜ごはんを食べ終わったあとは愛央が花道の練習をする。実は年に数回、愛央が花道を作り、俺を出迎えるってことがある。その練習を愛央はしているのだ。ポンポンを持ち、ドアの前で腕を高くしてポンポンを振る。あいちゃんはそれを見て「ねーねーしゅき!」っていうのだ。
そんなことをしていたら午後9時30分、寝る時間になったので俺らは寝る。明日は何が起こるのかな。
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