第弐話 女
女の名は、たえという。
源之進は一瞬、複雑な表情を浮かべたがなにもいわなかった。
木刀を肩に担いで背を向ける。
たえが源之進のあとを追った。
源之進は粗末な漁師小屋を借りて住んでいた。
たえが持ってきたおにぎりを二人で頬張る。
源之進は無言だ。
おにぎりと一緒にたくあんを噛む、ぼりぼりという音だけが小屋の中で響いている。
沈黙に耐えきれず、たえは訊いた。
「
答えは期待していない。たえに剣術のことはわからない。どうせ話しても無駄だと思っているに違いない。
たえもその答えが知りたいわけではなかった。
だけど、連れ合いである源之進が家をでたのは、まさに六門を修得するためだった。
安らかな家庭を捨ててまで六門を会得せねばならぬ事情が源之進にはあった。
「……まだだ」
低い声でぼそりと源之進はいった。
「裏二門の火の
つづく
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