第14話 クエスト終わりのボスの気配

「おりゃああああああッ!!」


「ぐぎゃああああ!!」


 洞窟のダンジョンにて、『天国への車輪ヘブンズ・ウィール』が唸りを上げて、オークたちをバタバタとなぎ倒していく。

 とてつもない回転パワーとその機動力に、鈍重なオークはついていくことができない。


 迫りくるオークの攻撃を側転のような回避で華麗に回避しながら、ワイヤーを引っ張ってヘブンズ・ウィールを背後からブチ当てた。


「おごっ! ……ぁあッ」


 戦闘は終了。

 オークの死体の山々を見ながら布で返り血をぬぐった。


 するとうしろのほうがからパチパチと拍手が。


「見事な戦いぶりだったぞけいよ。いやはやなるほど、対多数戦でここまでの芸当ができるとは。わたしの期待以上だ」


「で、で、できれば手伝っていただきたかったのでござぁますがクライメシアさん……」


「わたしがやってしまったらあっという間だ。それでは卿のためにならん。あぁ勘違いをするな? 別に手を貸さないわけではないよ。もしもあの戦いで卿が苦戦するようだったなら、わたしも出るつもりだった。本当だとも」


 ホントかなぁ……。


 しかしクライメシアが出ればあっという間というのは本当だろう。

 きっと自分がかけた時間の3分の1かそこらで、と。


「それにしても卿の戦い方は独特だな。誰かに教わったのか?」


「あぁ~まぁこういう武器使ってるしね。うちのおじいちゃんとかお父さんとか……小さいころに少しだけ教えてもらってあとは独学」


「なるほど。……風車のように肉体を回転させつつ、曲線的かつトリッキーな動きで相手の側面や背後に回り込みながら間合いを管理しているということか」


「……わかるの?」


「わかるとも。そしてその回転機構で自分にはないパワーと射程範囲をカバーしている。だが至近距離に持ち込まれるとかなり弱いと見えるな」


 クライメシアが彼女の戦いを見たのは『深淵への階段アトランティス』のときと、さっきのオークたちとの戦いだけだ。


 ただのそれだけでアンネリーゼの戦闘スタイルやその弱点を見抜いてしまった。 

 いや、強者であるのなら当然であるのかもしれない。


「クライメシア、もしもよかったらこの依頼が終わったら、私に戦い方を教えてくれないかな?」


「いいよ」


「迷惑なのはわかって……────え、いいの!?」


「断る理由があるかな? 卿の力になれるのなら協力はするよ」


「あ、ありがとう……じゃあ、さっさと終わらせよう」


「あぁ、……しかし、そう簡単にはいかなくなったかもしれない」


「え?」


 クライメシアが進行方向の闇の先へと視線を向ける。

 はっとしたが、そこからおびただしい殺気があふれでていた。


(なんだろうこの感じ。明らかにこれまでとは違うッ! それにこの臭い……火薬?)


 奥から現れたのはひと回りも大きなオーク。

 ここの親玉ボスなのか、武装面においても隙がない。


 1番目を引いたのが、身体中に取り付けている巨大な短筒だ。

 いくつも装備しており、弾切れを起こしても素早く取り出せるようにしてある。


 手には巨大な斧を持ち、いかにもなパワースタイルを雰囲気として醸し出していた。


(今までとは違う……強いッ!)

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