第4話 トラップ解除はお手のもの
まるで暗黒に潜む要塞だ。
石造りの建物が並ぶ入り組んだ通路の片側には溝があり、どこからか流れてくる清らかな水が心地よい音を刻んでいる。
ところどころに見える口を開いた異形の巨顔像。
この神殿に奉られている神なのか、果ては魔物なのか。
曰く、かつて存在した様々な文明の特徴がところどころに見られるとか。
壁に掘られた無数の文字が、それを物語っている。
1番古いものの中では、1万年近くも前のものまであるとか。
そんな環境下で、早速トラップ解除が行われていた。
これまでの挑戦者とは比べ物にならないほどの手際のよさで、未踏の場所へと続く道を切り開いていく。
通常使われるような解除道具とは違い、彼女専用の道具を用いて手早く行った。
「なんてスピード……、針山が飛び出してくるこの廊下の解除方法なんて今まで誰も見つけられなかったのに。わざわざ天井のその裏側とか見ます?」
「すごいわねぇ。さっきの光のパズルなんて一瞬だったわ。数秒見ただけなのに……」
トラップの声が聞こえるというのも、あながち間違いではないのかもしれない。
トラップやパズルのような複雑な構造のものをどのように解除し、どのように組み合わせればいいか、『脳に響き渡るメッセージ』としてわかるのだ。
一族の血からなる受け継がれ、変異した一種の才能か。
今回のように見たことのないようなトラップでも、一目で看破できる。
それがパーティーに迅速な行動をもたらしていたのだが、今ではこんな名誉な仕事に使われている。
「すごいですねアンネリーゼさん。こんな神業の持ち主知りませんよ」
「前にいた場所じゃ泥棒のほうが向いてるんじゃないかーって言われましたけどねアハハ」
「そんな、私は素晴らしい才能だと思っています」
「ありがとうございますグレイスさん。さぁもうすぐで終わります。少し下がっていてください」
壁に開いた小さな穴に腕を突っ込むと、グチャグチャとなにかをいじっている。
その様子に一同は怪訝な顔をしながらも、音を立てて動く巨大な石像を見た。
その先はまた通路だ。
だが、これまでにない濃密な気配がする。
「……姉様」
「えぇ、いるわね。でもおかしいわ。私の水晶に反応がなかった。……皆、警戒を。戦える人は備えて」
緊張が走る中、通路を進むたびに奇妙な音が響いてくる。
ガリ……ガリ……ガリ……。
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