第14話 復帰

そしてその夜

私の部屋に店長と一緒に帰ることになった。

(もう私ったらもっと掃除しておけばよかったわ。

いやー洗濯物出しっぱなし早く隠そう・・・)

『美涙さんただいま!店長が来ましたよ!どうぞ上がってください』

『ああ』

美涙さんは泣いていたのか目を腫らしながらも

店長の顔を見て何故かほっとしたようだった。

『店長!すみません。

本当だったら私、顔を合わせられないところですけど

どうしても謝りたくて美月ちゃんにお願いしたのです。

本当にすみませんでした』

と美涙さんは頭を思いきり下げた。

『そんなことより大丈夫なのか?いったい何があったんだ。

急にいなくなるなんて美涙らしくないし心配したぞ』

『本当に本当にすみません。私、結城の甘い言葉につい騙されて

新宿まで付いてってそこで・・・。』

と美涙さんは今までのいきさつを話した。


『そうか、バンスの金はその店に全部払ったんだな。

そうかそうかそれでよかったんだよ。

まあ金は戻らないと覚悟は決めたほうがいいな。

それよりそのまま逃げてきたら

結城の知り合いがどんな輩か分からないから

何が起こるか分からなかったよ』

『やっぱり、、、私もそんな恐さを感じて、

まあ払える範囲の金額だったから

お金のことは仕方がないにしても結城のことが

どうしても許せない』

美涙さんはまた目を潤ませた。

『美涙!これは交通事故だったんだ!

そう思って明日からその悔しさの分まで店で頑張ってくれ』

『えっ、お店に戻っていいの。もう戻れないかと思ってました』

美涙さんの涙が今度は安堵の涙に変わった。

『何言ってんだ!美涙はうちの看板娘だからなぁ』

『やだ店長古臭い言い方して』

そう言いながら店長の胸に飛び込んだ。

そうしている二人を見ると

きっと過去には良い関係があったに違いないと確信した。

 

そして次の日の夜。

美涙さんは元気に出勤した。

『美涙さんお電話です』

『はい、もしもしお待たせしました、美涙です』

『・・・やっぱり戻っていたのか』

『えっ?』

『俺だよ』

『あっ、』

美涙さんの顔がみるみる青くなった。

『なんで戻ったんだ!これから一緒に暮らす約束じゃなかったのか!』

『ちょっと待ってよ。今、仕事中なの。明日、電話するから切るわよ』と

美涙さんは急いで電話を切ると店長を探した。

『店長!今、結城から電話が来たの。何だか怖くてどうしたらいいですか?』

『あいつ!往生際が悪いな。俺が明日電話してやろうか?』

『ううん、でも迷惑じゃない?私、もう結城の声も聞きたくないのだけど

このままではまた電話されても困るしお店にもご迷惑をかけますよね』

『俺に任せろ!大丈夫だから』

とやはり頼りになる店長でした。


その後,

店長がどう話しをつけたか分からないが

それきり結城からの連絡はなくなった。

そして風の便りにその結城さんは揉め事に巻き込まれ

遠い地方へと逃げるように消えたと耳にした。

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