第13話 一件落着

 ついに美涙さんから電話が来た!

私は駅前のカフェへ急いで行った。

そしてそこで見たものは

今まで見たこともない姿で

背中を丸めてうつむきながら

声を出さずにただ泣いている美涙さんが居た。

『美涙さん大丈夫?でも無事でよかったぁー。

ずっと心配していたんだから・・・。』

と私まで涙が出てきた。

『ごめんね。私なんてことを・・・。』

『いったい何があったの?

もしかしたら結城さんのせい?

ねえ美涙さん私でよかったら聞かせて』

『そうその結城さん・・・。

いやだわ!その名前を口にするのもイヤ!

あいつとんでもない男だったの。

私、あいつのこと運命の人だなんて勝手に思っちゃったのがいけなかったのね。

新宿でいい店があるからなんて甘い言葉に騙されて付いてって

もう少しで売られちゃうところだったわ・・・。』

『売られるって今の時代そんな事ってあるの?』

『ま、売られるというのはオーバーかもしれないけど私の知らない間に

結城が勝手に多額のバンスしていたの』

『そんなぁ!そんなひどいことを!それでそのお店には行ったの?』

『まあ面接だけは行くには行ったけどなんか胡散臭いというかイヤな感じだったから

行きたくないって言ったらあいつの態度が急変して今度は半分脅しのようになって

正直怖くなって逃げて来たのよ』

『実は美涙さんがいなくなったその夜かな店長から結城さんのことで変な噂聞いたの。店長も最初は分からなかったみたいだけど以前働いてたお店で

結城さんがそのお店のナンバーワンを引き抜いてどこかの店に紹介したとか

貢がせていたとか何しろ女の敵みたいな人だと言ってたから

美涙さんに気をつけたほうがいいって言おうとした矢先に連絡取れなくなっちゃって、私がもう少し早くこの事を伝えていたらって美涙さんこんな事にならなかったですよね。すみません、、、』

『ううん、私がいけないんだから、美月ちゃんが責任を感じることはないわ。

そうあいつやっばりね。

顔はあんなに優しそうなのにそんな男だったのね』

『美涙さん今日はうちに泊まっていきませんか?

もう遅いし狭くて申し訳ないですが明日一緒に帰りましょうね』

『美月ちゃんありがとう。今日は私一人でいたくないの』

と美涙さんはやっと立てる状態になった。

でも私はその新宿のお店のバンスがどうなったか?

結城さんが後を追ってくるのじゃないかと内心気が気ではなかった。

でも今の状態の美涙さんへそんなことも聞くこともできず

明日になったら店長に相談しようとあんな鬼みたいな人だけど

こんな時、頼りになるなぁって思った。


『店長!ちょっとお話したいことがあります!』

『なんだ。今、あまり時間がないが少しならいいぞ』

『すみません。あの、美涙さんから昨日電話があって』

『何!早くそれを言えよ。そうかぁ。それで何処にいるって?』

『それが今は私の部屋にいてもらってます。』

『そうか無事だったんだな。それで何処にいたとか話したか?』

『まあ詳しくはちょっと私の口からは言えないですが

今夜もし店長お時間ありましたら美涙さんとお話してもらっていいですか?』

『ああ、もちろんいいさ、じゃ今夜お店が終わったら一緒に帰るとするか』

『宜しくお願いします』

(店長なんだか嬉しそうな顔!もしかしたら美涙さんのこと好きなんじゃないの??)


『みんな聞いてくれ!今日からの新人の麻衣さんだ。まだ慣れていないから

みんなで教えてやってくれよ。

と店長が唐突に紹介したのはちょっと異質な感じの新人さんだった。

何が異質かというと雰囲気がどことなく垢抜けていて都会的な感じ。

時計やバックはブランド物!洋服もあきらかに私達が着ているドレスとは違う。

年齢もまだ20歳になっただろうか?美形で色白でどことなく近寄りがたい。

いったいどこから来てどんな生活しているのか急に興味がわいてきた。


『麻衣ちゃんここに座って』

と少しは先輩らしく言ってみた。

『あの、こちらでよろしいのでしょうか?』

(うわ!上品な言葉使い!私たちとやっぱり違う・・・)

『ええ、よろしいのですよ。やだ!こんな上品な言葉言ったことないわ』

『麻衣です。よろしくお願いします。このお仕事初めてで何も分からなくて』

『この先輩の美月が分かる範囲で教えましょう!』

と蘭子ちゃんもそばにいてみんなで笑った。


この時から蘭子ちゃんと麻衣ちゃんと私の

仲良し3人組の出会いの日でした。

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