第3話 真夜中の闖入者
ここは『風花』の社長宅。
ご近所でも有名な白亜の豪邸とも言われている瀟洒な邸宅だった。
今の奥さんは2代目で体の弱かった前妻を追い出した略奪婚という噂もある。
イタリア製のゆったりとしたソファに座りながら
ほんの僅かな夫婦の語らいの時だった。
その数分後には流血騒ぎの修羅場と化すとは2人とも想像もしていなかったに違いない。
『今夜はどうだった?』
『まあまあだったわね』
『そうか、最近売上が落ちているから新しい戦力となる子をスカウトしたらどうかな』
『そうねぇ、だけどそんな都合よくいい子がいるかしら』
『大塚にもっとハッパかけてスカウトさせたらどうなんだ』
『あなたぁ、お店のことは口ださない約束なんじゃないの』
『まあ、そうだが心配しているんだぞ』
『私、体が強くないしそう集中力続かないのよ』
・
・
・
ピン~ポーン
『あら、誰かしらこんな時間に・・・。』
『はぁーい、どなたですか?』
『・・・』
『どちらさまですかー?』
『社長!社長いますか!』
『はあ??どなた?』
『社長!出て来い!』
『えっー!何なの!』
『あなた!誰なの?』
『わからん、何なんだ!いったい』
と社長の水野は誰が来たのか一瞬で分かったが突然のことでどう対処していいのか
震える手を抑えながらその場に凍り付いた。
カチャ
『どなたかわかりませんが玄関先だと困りますから入ってください』
そこには20歳代後半の気の強そうな顔した酩酊状態の女の子だった。
『もうあたし・・・。我慢できないんです』
『だからうちの主人になんかご用ですか?』
『実は・・・私・・・社長の・・・』
『ちょっと待ってよ!うちの人の何なの!』
『もう私こんな関係我慢できなくて!私にあの人返してください』
『返して?ちょっといい加減なこと言わないでよ』
『返してくれるまでここから離れません』
『ちょっとあなた!何のーこの子!』
『・・・由美子!何なんだ!いきなり!今日のところは帰ってくれ』
『由美子って!』
『お前にはあとで説明するから』
『私・・私もう待つだけの女じゃいやなんです!』
『わかったからお願いだ、今日は帰ってくれ』
『イヤ---!』
『ちょっといい加減にしてよ』
ママはそれまで吸っていたタバコを指で弾いて由美子へ投げつけた。
その直後
ガチャ-ン!!
由美子は玄関の窓ガラスを右のこぶしで割った。
『大変だ!由美子しっかりしろ!』
由美子の手から血が噴き出て
玄関はもう血の海のようになっていた。
『おい救急車!』
『もういったいなんでこんなことに』
『説明は後だ。こんなに血が出て、早く救急車だ!』
『社長・・・私のところへ・・・』
『黙ってろ!おまえはなんてことを・・・』
ピ-ポ-ピ-ポ-
・
・
・
こうして深夜の戦いは
由美子が右手を十数針も縫う怪我とともに
終ったのです。
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