第2話 仕事開始!
『美月さんお願いします』
(マネージャーからついに声がかかった!
『は~い』
(ドキドキ、どんなお客様なんだろう?ええええあのおじ様?)
『今晩は。。。』
『いやいやいい子入ったじゃないかぁ』
(こんなおじ様いやおじー様やだぁ)
『よーさんこの子、今日から入った美月ちゃんなの』
(と隣にいた当店ナンバーワンの美涙さんが紹介してくれた)
『美月です。宜しくお願いします』
(よーさんはいいけど美涙さん素敵!色白で肌も綺麗だし優しい感じだわ)
『美月ちゃんか、まだ若くていいねえ、どうだい今夜どこか食事でもいかんかね』
『まあ、よーさんたら気が早いんだから。まだ入ったばかりでこんなに緊張して可哀想じゃない』
(そうそう可哀想。。。美涙さんかばってくれたぁ、嬉しい!)
『何でも飲んでいいぞ、つまみも食べるか?』
『いえ、あ、いただきます』
(つまみは食べちゃいけないのよね。確か)
『このよーさんはね、この町で一番大きな米屋の社長さんなの』
『長瀞に別荘も持っていてお庭もすごいって噂なの』
(米屋のよーさんね、そんな感じね)
『いやいや米粒くらいな別荘だよ。でも庭の石にはちょっと金かけたね。まあ最後の贅沢かな?あっ、そういえばこの前、死にそうになったんだよ』
『夕方だったんだけど家に帰ろうとして車がさ急に踏み切りの端のほうで止まっちゃってさ、その時運悪く電車が来てドーンとぶつかったんだよ。端だったからまともにぶつかった訳じゃなかったから良かったけどもう駄目かと思ったよ』
『ええ!まあ大丈夫でしたの?』
『大丈夫じゃなかったらここにいないよ』
『それで車は?』
『それは駄目さ、いくらベンツでも電車じゃ勝てないよ』
(ベンツでよかったじゃないの)
『それで足を少し怪我しただけで済んだけど怖いね、世の中、何が起きるかわかんない』
と、よーさんの話で盛り上がる。
『そうそう今日は美月ちゃんの入店祝いでお寿司屋さんにいかない?』
(いかない。。。行きたくない。だって生もの食べられないし)
『美月ちゃん行こうよ』
(美涙さんのお誘いだから行っちゃおうかな)
『美月さんお願いします』
えっ、また違うお席に行くの?
『よーさんちょっと失礼します』
(またドキドキしてきた)
『今晩は。。。』
(一美さんのお客様だわ)
『あ、美月ちゃん悪いけどアイス持ってきてくれる』
(なんで氷を取りに行かなきゃいけないの?)
(ボーイさんにお願いするのじゃないのかな?)
『美月ちゃんか、初めてだね・・・』
『いいの、いいの、それよりさっきの話の続きなんだけど・・・』
(感じ悪い!私のこと完全に無視状態!これいじめなのかな)
『美月ちゃん灰皿ないから貰ってきて』
(・・・。もう腹立つ)
こんな感じの初日はあっという間に過ぎていきました。
『クラブ風花』のシステムは
完全な指名制で毎日来るお客様でも
『今日のご指名は?』とマネージャーが聞く。
また場内指名というのもあり普通の指名料の半額で売り上げの対象はならない。
基本給(売り上げの歩合で日給が決まる)+指名料=給料で
売上の一番多いのがナンバーワンとなる。
実はこの指名制というハードな制度によって
毎夜繰り広げられる甘美の世界の裏は想像を絶する熾烈な
女の戦場でもあった。
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