銀座ドリーム~どヘルプから銀座老舗のオーナーママになるまで~
mizuki
第1話 体験入店
ある地方銀行に勤めている内気な女の子がいました。
出納係りという少し特殊な部署のため毎日現金との戦いで
当時市内全部の公衆電話の10円を数えるのが私の仕事でした。
来る日も来る日も重い麻袋から両替機に入れ気の遠くなる単純な仕事でした。
『私このままでいいの?』体重は半年で10キロ減ダイエットもしてないのに
ご飯が食べられない日々。
ああもう限界!と辞めてしまいました。
そんなある日、友人から市内でも最大のクラブで事務員を募集していると紹介してもらったのです。
そこは大きいクラブでホステスさんだけでも50人位はいたでしょう。
生バンドも入っていてそれはそれは豪華絢爛そこの事務員ですから
お店の中の事務室で簡単な事務をしていました。
そうこうしているある日
ママさんからお願いがあると。。。
『今日、女の子が休みで美月ちゃんお店手伝ってくれないかしらぁ~』
『えええ!私がですか?お洋服もないし・・・』
『大丈夫よ。私の貸してあげるからネ』
『それじゃ今日だけですよ私事務員なんですから』
そしてその夜
貸してもらったのがショッキングピンクのロングドレス!
わお!変身!ママさんにお化粧もしてもらいいきなりクラブの女性誕生!
『ターさん今日から入った美月ちゃんです。ピカピカの新人よ宜しくねぇ』
『・・・今晩は』(手が震えてるぅ)(でも何か楽しい)(もしかしたら私)
(この仕事好きかも)
『美月ちゃんお疲れさまぁ~。今日はどうだったぁ』
『そうですねぇ、思ってた程大変じゃなかったです』
(それがかなり楽しかったのよ)
『そうーそう~それじゃもう少しだけ来てみる?』
『そうですねぇ・・・。』
『お給料も事務員の時の倍だすから美月ちゃん考えてみてよ』
『ええ!倍ですか!』(こんな楽しくてお給料倍なんて考えられない、
もうやるしかないわ)
『ママさん、私やってみます。でも何にも分からないし大丈夫でしょうか?』
『大丈夫よ。私が教えるし店長にも頼んであげるから、
それからそのママさんはなしね。ママだけでいいのよ』
『はあ、宜しくお願いします』
そうかぁ、ここでひとつ問題があった。
その店長がなんと鬼塚(本当は大塚さん)と言われるくらい
厳しくみんなから恐れられているのだ。
聞いた話しによるとお客様と同伴で何分か遅れただけでみんなの前で
『今、何時だと思ってるんだ!』
って叱られたと・・・。あぁそんな人、なんだか怖い。
『おはよう!』
『あっ!おはようございます。よろしくお願いします』
(いきなり鬼塚だぁ)
『ママから聞いてると思うけどうちは厳しから覚悟しておいてくれ』
『・・・。はい!』
『じゃ、注意事項をいくつか』
『まず禁止事項!』
『あっ、はい!』(威圧感バリバリ)
『遅刻は厳禁!人間として守らなきゃいかん』
(少し大袈裟じゃないの?)
『次!足組んだり肘をテーブルについてもダメだ!
そんなのを見たら客の前でも注意するからな』
(すごっ体育会系!)
『次!客の前でつまみは食べるな』
(客!客!って店長のほうが態度悪いじゃん)
『おい!聞いてんのか!』
『はぁ、聞いてます』
『次!』(まだあるの?)
『同伴は8時半まで。1分でも遅刻したら給料から引くからな』
(はいはいわかりましたよ)
『次!』
(えぇー)こんな調子で延々注意事項が続いた。
夜の世界も見た目と違いかなり厳しい世界だった。
この『クラブ風花』は駅から1分という好立地にあり大きなビルの2階。
階段にも装飾が施されお客様の期待感を盛り上げる。
80坪という広い店内は毎日、洪水のようにお客様が来店され賑わっている。
そして生バントの音楽と共に毎夜、在席50人程の女たちの戦場でもあった。
まず入口に入るとフロント兼キャッシャーがあり左右の入口に分かれている。
左は川上チーフのいるカウンター席でどっしりとした革張りの椅子は
かなりの幅があり、この高級感がお客様の優越感を満足させるようだ。
毎回このカウンター席を指定する人もいるくらい居心地がいい。
その奥は調理場でシェフがクラブとは思えない程の本格的な料理を作っている。
フロントから右へ行くともうそこは現実から遠い、
甘美な世界へと続いている。
大きなフロアーにはテーブル席が贅沢な距離間で配置されステージには
5人編成のバントさんが豊富なジャンルの音楽をBGMとして奏でている。
そして一番奥まった席はVIP席と呼んでいて邪魔にならないほどの目隠があり
重要人物の接待用に使われている。
狭い町なので顔を合わせると支障があるのかもしれない。
その他、女子用のロッカールームがあり各ロッカーも完備されていて
着替えやお化粧直しもできる。
こうして美月のクラブデビューは始まったのです。
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