第4話 言い訳

 麗子ママは真相を究明しないと気が済まなかった。

時はすでに朝日が東の空からしらじら明けようとしていた。

『説明して』

『・・・。』

『いったいあの女といつからだったの?』

『すまなかった、でき心だ』

『うそ言わないで、そんなでき心でここまで女が乗り込む?かなり深い付き合いじゃないの』

『悪かった。あいつは可哀相なやつなんだ。両親を事故でなくしてひとりで生きている』

『だからって・・・。』

『それに妹がいるみたいだが今、行方もわからないらしい』

『あなた!そんなのただの言い訳じゃないの!浮気してて同情もないもんだわ』

『もうこんな時間だしそろそろ怜香も起きてくる頃だ。また後で話し合おう』

『私、今日のこと許せないし今後のこと考えさせてもらいます』

そうママは捨て台詞のようにきっぱり言って自分の寝室へと戻っていった。

実はこの時ママのお腹には新しい命が宿っていた。

怜香ちゃんは3歳なので弟か妹が出来ると目を輝かしながら

生まれてくる赤ちゃんを楽しみにしていたが

ママはこの先のことを考えると不安と憤りで複雑な思いだった。


 その夜『クラブ風花』にて

『おはようございまぁ~す』

(あれ何だか変な空気、みんなヒソヒソ話ししてて事件でもあったのかな?)

『あっチーフおはようございます。何かあったんですかぁ』

『あぁおはよう、ううんイヤ別に何もないよ』

『だってみんなヒソヒソ話ししてるじゃないですかぁ』

『いや・・・まあここだけの話しってことで昨日ママの家で事件があったんだよ』

『えぇ?』

『実はママのご亭主に愛人がいてその愛人が乗り込んできて一大事さ』

『わあぁ!なんかドラマみたい、それでママどうしたの?』

『それがさ、やっぱ胆が据わっているっていうか、その女にタバコ投げ付けて帰れって言ったそうだ』

『そうなんだぁ、それでその女の人は帰ったの?』

『そこだよ、そのあと事件が起きたんだ』

『・・・。』

『その女がさ、タバコを投げられたのが腹がたったのかいきなり玄関の窓ガラスに

素手で殴って大怪我して救急車呼んでまさかご亭主も行けないしママもパニック状態で店長が登場したってわけさ』

『そうだったの、素手じゃ切れちゃうよ』

『なんでもその女、相当酔ってたみたいで病院でも大騒ぎで大変だったって』

『でもさぁ、余程好きだったんじゃない旦那さんのこと?』

『まあ、分からなくもないけど殴り込みというか、自宅にいきなりじゃ反則だよ、

愛人の心得もないもんだ』

『それで怪我は?』

『右手の拳のところと腕で何十針も縫ったって。』

『やだ~痛そう。そうそう~その愛人の心得ってまあ参考のために教えてよ』

『そうだな。まず第一は男が帰る時は今度いつ会えるって聞かない』

『第二は石鹸は無臭の物を使う。もちろん自分でも香水はつけない』

『第三はここが肝心なんだけど結婚してほしいとか子供がほしいとか

奥さんと私どっちが大事なのとか聞かない』

『ちょっと待ってよ。それって男性にとって都合いいだけの女ってことじゃない』

『まっ、これはほら銀座でも有名なママが本出しててさ、その本に書いてあったものの受け売りだけどね』

『そうなんだ、でも明治時代じゃあるまいし男性の言いなりなんて私いやだなぁ』

『美月ちゃんはまだ若いから女の業が分からないかもな』

『業ね、なんだろう?』

こうして事件は店中に浸透しママはしばらく顔を見せなかった。。。

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