#11 早く気付け

 俺はわかっていた。アヤの気持ちを。幼馴染みであり好きになった人だったから。アヤは俺が嫌いだと思ってる。いや、実際ははじめ、からかってると思ってたアヤは俺が嫌いだった。でもさ?おかしいよな。俺が嫌いなら、そんなわざわざ俺と話したり俺を見たりする必要はない。どうせ本当は俺のことが好きなんだろ。わかり易すぎるだろう。でもまだ気づけていないみたいだから自覚するまで待ってやるよ。気づいたときの反応、きっと可愛いだろうな。顔を真っ赤にして、俺をしっかり瞳の中で捉えて。そして「嫌い」って言うのだろう。

 本当に可愛いな。イジワルしたくなるのも仕方ないと思う。


 後ろを向けばアヤは睨んできて。本当に愛おしい。思わず笑ってしまう。いつまでも見ていられる。俺が手をアヤの頬に伸ばせば顔を赤らめて避ける。しかし頬に触れてしまえば俺の思うがまま。特に嫌がらず恥ずかしそうにしてるだけ。

 本当になんで俺を嫌いなんて思うのだろう。

 やっぱりアヤは馬鹿だな。


 昼休みアヤに言った。

「おい、アヤ。金持たせるから肉まん2つ買ってこいよ。」

 するとアヤは顔を顰める。

「かつあげ?」

「金出すっつってんだろ。」

「………わかった。」

 俺が不良だと思いアヤは諦めた。


 帰ってきた。間違いなく俺に嫌悪感を抱いたアヤが。コンビニの袋を持って俺に渡した。俺は「ありがとよ」と言いながら袋から肉まんを1つ取り出してアヤに渡した。アヤは驚いていた。

「なんだ、いらねーのか?肉まん好きだったろ?」

「いや、そうなんだけど。いいの?」

「いいに決まってんだろ。アヤのことが好きなんだから。」

 するとアヤは顔を真っ赤にしながら肉まんを食べ始めた。これは小さくても俺の優しさ。アピールだ。言葉だけじゃ足りないんだろ?この欲張り。だから俺はこれからも沢山アピールするよ。


 素直じゃねーな。ツンデレもほどほどにな。それでも俺はお前が好きだけど。可愛いな、なんて口には出さないけどキザったらしい言葉でアヤを惑わす。俺も慣れたものだ。俺のこんな姿を昔の俺が見たら恥ずかしがるだろう。だって昔の俺は素直になれなくてアヤを傷つけたのに。だから俺は素直でいようと思った。せっかく席がアヤの前になったんだから。

 イジワルしてるけど俺は本当にアヤが好きなだよ。わかるだろ?

 愛してるじゃ足りないのか?好きじゃ足りないのか?じゃあ、どうしてほしいんだ?俺はアヤを嫌いになるわけないのに。どうせアヤも俺が好きなんだろ?いつまで気づかないフリしてんだよ。この弱虫。俺が好きって言ったら意識してくれる癖に。顔を赤くするくせに。なんで気付けないんだよ。


 アヤも早く気付けよ、どアホ。

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