#9 私を嫌って
それから私は無視をした。永野の嘘くさい愛の言葉を受けながら全て無視した。話したのは業務連絡だけ。それでも私に話しかける永野がうざったかった。睨んだりもしたが永野は余裕そうに笑うだけ。なんで私を嫌いになってくれないのだろう。
目を合わせるのもやめた。常に下を向き無視をする。
「好きだよ。俺と付き合え。」
無視をした。たまに心珠の方に行ったりもした。雉田君のそばには行かなかった。どうせ永野が煩いから。顔を合わせようと顔を近づける永野。目の前には永野の首が見えた。すると骨ばった硬い大きな手が私の方に迫ってきた。私は離れた。急いで心珠の方に行った。
本当に何なの。
心珠は笑った。
「本当に大好きだね、綾香のこと。」
「私はあいつ嫌い。」
心珠に苦笑される。雉田君も笑っていた。
「本当に大変そうだなぁ〜。」
「大変だよぉ…。やめてほしい。」
ふと永野を見る。頬をついてぼーっと外を眺める。太陽の光に照らされ金髪が風になびきサラサラ揺れる。茶色い瞳は光を溜め込み静かに輝いていた。筋肉質な引き締まった体は影を作り、高くスラリとした鼻筋は綺麗な形だった。
よく見ると綺麗な奴だな。
なんなんて思ってしまった。
心珠が楽しそうに笑った。雉田君も心珠と顔を見合わせて笑った。なんだろうと思って見てると言った。
「本当に二人って面白いな〜!」
「何よ、好きなんじゃない。」
「好き?誰がどいつを?」
私はそう言った。すると心珠は頭を抱えた。
「なんでわからないのかな〜。」
「そのうちわかるよ。」
私は二人の言うことの意味がわからなかった。暫く考えたがわからなかったから考えるのを諦めた。
席に戻ると永野が私に顔を近づけてきた。茶色い瞳が私だけを映す。少しだけ怒ったような顔をしていた。私は下を見ていた。
「こっち見ろよ。」
その声は低く怒り混じりだった。私は怖くなり見てしまった。彼は怒っていた。怖いほど鋭い瞳が私を刺すように見ていた。
「今度は無視か?アヤ。」
これは本当に怒っている。しかも今度はってことは前から怒っていた可能性がある。なんか考えだしたら怖くなってきた。
「なんでお前がやったのに怯えてんだよ。」
私は顔をそらそうとした。すると大きな手で私の顔を掴んで無理矢理顔を合わせられた。鋭い瞳がバッチリ私と合う。
「俺が怖いか?」
お前から嫉妬させてきたり思わせぶりな態度で騙してきたのに?
彼はそう言った。私は確かにと思ったがやはり怖くてなにも言えなかった。すると永野は手を離した。
「すまんかったな。」
そう言って前を向いた。ついに私のことを嫌いになったのか?
しかし今の私じゃそれを喜べなかった。
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