#8 私を嫌って
事件の翌日。相変わらず早く登校している永野。私は鞄の中身を整理して一時限目の準備をした。すると永野が私を見つめた。始まった。と思いながら睨んだ。
「アヤ愛してるよ。今度一緒にどっか行かない?」
「行かない。」
「つれねーなァ?」
優しく微笑む彼。彼氏面。ドン引きしながら睨んだ。
「私のどこが好きなの?」
睨んだままそう彼に聞いた。
「アヤが好きなんだよ。どことかじゃなくて。」
どこから湧いてきているのかわからないが自信たっぷりにそう言った。なんか、まだ子供みたいなやつだな。なんて思った。タイプじゃないわ。
「恥ずかしくないの?そんな堂々と好きって言って。」
私の質問に彼は目を見開いた。そしてゆっくり口角を上げた。私をニヤニヤ見ていて気持ち悪い。
「恥ずかしくないわ。聞かれて嫌じゃないから。でもアヤは恥ずかしそうだな?照れてる?」
私が嫌なの。
「照れてません。」
すると永野は私の頬に垂れる前髪に優しく触れた。大きな立派な指が私の頬を撫でる。私は戸惑った。そして理解した。彼はボディタッチで距離を詰めるつもりだと。普通に気持ち悪いし、恥ずかしい。彼は余裕顔で言った。
「顔真っ赤。」
「……〜うっさいなぁ…!」
私は一枚上手の永野から視線をずらした。いつからこんな性格になってしまったんだ。足音がした。私はこんな光景を見られまいと漫画を読んだ。永野はそれに気がついて私から離れた。こういうときは空気が読めるんだな。なんて軽く感心していた。教室に入ってきたのは雉田君だった。私は彼に駆け寄った。
包帯を巻いていた。
「おはようさん。」
「おはよう。」
すると優しく明るく笑って私に言った。
「永野に言えたか?」
「言えたけど、振り出しに戻った。」
すると雉田君は苦笑した。やっぱり雉田君と話をするのは楽しいな。するといきなり後ろから手を回された。バックハグのような形で私は永野に捕まった。
「何してんの!?」
私が困っているのにお構いなしな永野。雉田君は苦笑していた。
「またお前か。」
そう言って雉田君を睨んだ。子供みたいにわがままを言う永野に私は呆れた。そしてもう一つ。
「雉田君にしなきゃいけないことがあるでしょ?」
「はぁ?謝れって?」
こんなときだけ怖いくらい低い声出しやがって。
「いいよ鹿島さん。大丈夫だから。」
雉田君は綺麗に笑うと少しだけ永野を睨んだ。あまりこの二人仲良くないな…。
「前回ので懲りねーなんていい度胸してんな?」
永野はそう喧嘩腰。怖い顔して少し首を傾けて雉田君を見下していた。それに動揺せずに見上げる雉田君は強かった。
「あんま鹿島さんが困るようなことしないでもらっていい?」
「おぉ、なんだ彼氏面じゃねーか。」
お前がな。なんて言うのはとりあえず今は控えた。雉田君は優しいな。雉田君の行動の全てに優しさがある。いつも困らせてくる永野とは大違い。
雉田君は私を見て笑った。
「気をつけてね鹿島さん。」
本当に心強い味方ができたものだ。
「うん。」
一つわかったのは嫉妬させたら単純に永野のスイッチを押してしまうだけだと。嫌いになるどころかさらに熱が増してしまう。
なら無視をしてみよう。無視されたら嫌になるだろう。嫌いにさせるって難しいな。てか、永野強すぎるでしょ。
私が嫌いな幼馴染みは私に溺愛中。
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