#5 本音を聞かせて
私は放課後がっかりした顔で雉田君に会いに行った。雉田君は私の顔を見て驚いた。
「失敗したみたいだね…。」
「あの馬鹿幼馴染み!!」
私はお兄さんみたいな雉田君に甘えながら愚痴を言った。雉田君は苦笑しながらも話を聞いて相槌を打ってくれた。あぁ、本当に雉田君が幼馴染みだったら良かったのに。
「内緒って…知られたくないことなんかな?」
「一番欲しくない言葉だったのに〜。」
「でも、付き合ったんでしょ?」
「仕方なくね。でも永野の思い通りになるのは癪だから作戦考えてね。」
「俺がなんか…。まぁ、いいけど。」
本当に雉田君は優しいな!
さぁ、私の馬鹿彼氏。本音を聞かせてもらおうじゃない。
とりあえず私は永野に永野の好きなところを言った。
「イケメン」
「筋肉質」
「強い」
「撫でるの上手」
「俺様感がかっこいい」
「声がかっこいい」
「金髪よく似合う」
「男前で好き」
な、わけあるか!!!バーカ!
そう言ってやりたいのをぐっとこらえた。しかし永野は前みたいに照れずに「それだけか?」と言っていた。その余裕顔、捻り潰してやる…。そう心に決めながら思ってもいない言葉を永野に浴びせた。
ドン引きされるくらいまで。
今度は近づいて顔が触れそうな位置まで近づいて言った。
「私は?私のどこが好き?」
「ん〜?俺はお前が好きだよ。」
「だからそのお前っていうのはどういうところ?」
「お前を全部が好き。」
それって、どういう意味よ。
傍から見たらバカップル。私は永野の本音を聞くため嫌われるためにバカップルを演じた。それでも抱きしめたりはまだしたくなかった。
「なんで私なんかと付き合ってくれたの?」
「好きだから。」
「どこが?」
「俺はお前が好きなんだって。」
「だからそのお前っていうのは具体的にどこなの?」
ここから始まるエンドレス。本当にどうして答えてくれないんだろう。さっさとおさらばしたいのに。
私って最低だな。
帰宅した。部活終わりで疲れていたからすぐにベッドに突っ伏した。なんか永野に告白されてから悩むことが多くなったな。疲れも多いし本当に嫌だな…。
私も酷いよね。好きでもないのに付き合って思わせぶりな態度で接する。でも、それは昔永野がやったことだよ?子供だからって関係ない。私は昔永野が好きだったんだから。それを冷たくあしらったのは永野の方だ。
好きって言うくせに理由は言えないなんて。もしかしたら本当にからかってるだけかもしれないな。
私はスマホで永野に「なんで私が好きなの?」と聞いた。するとすぐに既読がついて「何回聞くんだよ」と返された。顔が見えないせいで少し怖さは増した。私は「好きだから」と返すと既読はすぐ付き「可愛いやつだな」とからかわれた。なんで教えてくれないの?私はだんだん嫌になってきた。
空は赤くオレンジ色の雲が流れていた。電気がついていない部屋にはオレンジ色の強い光がさしてきていた。
私の目的は永野を愛すことじゃないんだよ。永野に嫌いになってもらうこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます