#4 本音を聞かせて
私は机に突っ伏していた。そばで困ったように苦笑している心珠は「どうしたものかね〜」と言った。心珠に私は永野のことを相談していた。
「綾香は嫌われたいの?」
「そうだよ。」
心珠は苦笑。すると一人の男子が声をかけてきた。
「お、お二人さんどうかなさったんで?」
そう言ったのは子供らしい顔の放送部の
「俺で良ければ相談乗るで!」
彼はとても頼れるようだった。私は言葉に甘えて相談した。
すると心珠と同じく苦笑した。そして私を哀れむような目で見てきた。
「なんか、鹿島さんすごいな…。あの不良手懐けたんだろ?そうそういないよ、アンタみたいな人。いいんじゃない?付き合ってみれば?付き合ってみていやだったら振ればいいじゃん。」
そのとおりその通りだ。でも私は彼なんかと付き合いたくなかった。だから雉田君に過去の出来事を伝えた。またも苦笑。
「じゃあ付き合いたくもないんだ?……じゃあ誰かと付き合ってることにしちゃえば?」
私は顔を上げた。
「鹿島さんが別の男の女の子だって知ったら相手も手ぇ出せないんじゃない?」
「天才!!!」
私は声を荒らげて雉田君の手を両手で掴み上げた。私は彼の考えに賛成するばかりだった。
「ただ。」
しかし彼のその発言のために私の希望は打ち消された。
「もしも、鹿島さんの彼氏って噂の人が出てきたら喧嘩とか起こり得るな」
私はゾッとした。そうだ、彼は不良だ。何をしでかすかわからない。でも……。
「やる。それでもその作戦やる。」
「本気?」
「やめよう綾香!綾香も危ないかもよ?」
心珠はそう言って私を止めてきた。
「だって、それのおかげでほんとうに彼が私を好きなのかわかるでしょ?」
「一か八かだな。でも、鹿島さんの発言的には永野、鹿島さん好きそうだけどなぁ…。」
「わからないの…。」
私は呟いた。今まで言葉に出ないように蓋をして胃の中に押し込んでいた言葉が大きくなって溢れて零れていった。
「わからないの、永野にどうやって接すればいいのか。幼馴染みなのにもうわからなくて。」
すると雉田君は真剣に考えてくれた。そして頭を撫でてくれた。何やら雉田君は頼れるお兄さんみたいだ。私は弱々しくへにゃぁと笑った。
「なら、引いてだめなら押してみろ作戦だ。」
「普通、押してだめなら引いてみろじゃない?」
雉田君の言葉に心珠がツッコミを入れる。
「鹿島さんは嫌われたいがために引いて接してたでしょ?でも逆にあたかも鹿島さんも永野が好きみたいな雰囲気を出して接すればいい。それでドン引きされるくらいまで頑張れ。それで喜んでもらえたら永野は本当に鹿島さんが好きなんだよ。まぁ、人によって個人差あるけどね。」
本当にどこまで頼れる人なんだ雉田君!お兄さんになって欲しい。切実に…。私は「わかった!ありがとうふたりとも!」と言って席に戻った。トイレに行った永野が帰ってきたら作戦開始だ。
永野は帰ってきて私を見つめた。本当に何がしたいの?困惑しながらも作戦を思い出す。よし、実践してやる。そう思っていた。何故か永野に頭を撫でられた。
え???
「お前、何俺以外の男に撫でられてんだよ。」
俺以外の男って、雉田君のこと??見、見られてた!それどころか聞かれたかもしれない。ど、どうやって実践しよう。
「何焦ってんだよ。」
彼はそう言って私を見た。何故か距離が近い。私は初めて恥ずかしいと感じた。体は熱くきっと顔は真っ赤だろう。しかし永野に感じた恥ずかしいは少女漫画のようなものではなく苦しさも感じた。
彼はそんな私を見て目を見開いた。
「なんだ?俺に惚れたか?」
そう言う彼を見て私は作戦を開始した。うつむいてこくっと小さく頷いた。顔は見えないが驚いた彼は「本当に?」と聞いてきた。ごめんね嘘だよ。そう思いながら顔を真っ赤にしながら頷いた。彼は固まっていた。そして困惑の声で言った。
「じゃあ、付き合ってくれるか?」
「私で良ければ…。なんで私を好きになってくれたの?」
すると彼は口早にこう言った。
「それはこっちのセリフなんだけど。」
「……なんか、相談してたら好きだって気づいちゃったの…。“カズ”は?」
わざとらしくカズと呼んでやった。ようやくほしい言葉がもらえる。永野の本音が!
永野は顔を少しずつ赤くしてそれを隠すように腕で顔を隠した。照れてる。あの、不良の永野が。私は永野を見つめてしまった。罪悪感がすごい。でももうすぐ聞きたかった言葉が聞ける。
「内緒…。」
は????
彼は顔をそらしてしまった。そんな、私に言わせといて永野は答えてくれないわけ!!??
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